生成AIはどんなビジネスに活用できる？ 導入メリットや事例を解説
更新日：2024.05.08
近年、生成AIの性能が飛躍的に向上しビジネスでの活用が広がっています。
本記事では、生成AIが注目されている背景やどのようなビジネスシーンで役立つのか、具体的な事例やユースケースを交えて解説します。
また、生成AIをビジネス利用するうえで知っておきたい注意点にも触れていますので、自社ビジネスに生成AIの導入を検討している方は、ぜひご覧ください。
目次
そもそも生成AIとは何か
生成AIとはジェネレーティブAIとも呼ばれ、与えられたテキストやデータから新しいコンテンツを生成する人工知能の一種です。大量の既存データからパターンを学習し、確率論的にそれらを組み合わせて新たなコンテンツを生み出します。
生成AIの重要な特徴のひとつは、文章の作成をはじめ画像や音楽などの創造性が求められる分野で活用できる点です。また、自然な言語で会話形式によってやりとりできるため、人間と会話をするような感覚で扱えます。
生成AIが注目されている背景
生成AIが注目を集めているのは、その驚異的なコンテンツ生成能力により、企業のさまざまな業務プロセスを大幅に効率化できる可能性を秘めているからです。利用方法も簡単で、アカウントを作成して電話番号の認証後にすぐにチャットでAIに指示できます。こうした利用するまでのハードルの低さや汎用的にビジネス活用できる点も、爆発的にユーザーを増加させた要因となっています。
2022年11月に公開されたChatGPT-3.5は、自然な対話と高度な応答を高い水準で自動生成できることが示され、大きな話題を呼びました。最新モデルであるChatGPT-4（2024年5月時点）は、すでに司法試験や医師国家試験の合格レベルに達したと明らかにされており、社会に大きなインパクトを与えました。数学、化学、物理、歴史など大学受験の主要な科目でも人間より上のレベルの解答ができ、30近い言語を操るなど、“できること”の多様さから多岐にわたる応用を期待されています。
実際、生成AI市場は今後急速に成長すると予測されています。一般社団法人 電子情報技術産業協会の調査では、2030年の国内の生成AI関連市場の規模は、1兆7,774億円に成長するとの見通しを示しました。労働力不足に悩む企業で業務効率化のニーズが高まるなかで、生成AIの市場はいっそう拡大すると見られています。
文章生成AIの基本的な活用パターン
現在生成AIのなかで最も広く使われているのは文章生成AIです。そのため、これから文章生成AIの主な活用パターンを紹介します。
1.文章を生成する
生成AIは与えられたキーワードに基づいて、膨大なデータの中から確率論で単語を並べて、新しい文章を生成できます。メールや企画書、提案資料、ブログ記事やニュースリリースなど、あらゆるビジネスジャンルの文書作成に活用可能です。
大量の自然文データから文章の構造を学習しているため、まるで人間が書いたような自然な文章を生成できます。加えて、文体を柔軟に変更でき幅広い用途に対応します。
2.文章を補足して拡張する
文章の拡張において生成AIは優れた性能を発揮します。既存の文章に新たな情報を付け加えたり、詳細を補足したりといった文章の拡張を行います。
たとえば、商品・サービスの特徴を箇条書きにして生成AIに入力し、それをもとにひと連なりの紹介文を作らせるといった利用が可能です。元の文章の情報量に応じて、適切な分量の詳細を追加して拡張文を生成できる点が特徴です。
3.文章を要約して簡潔に表現する
生成AIは長文の文章を的確に要約し、主旨や要点をコンパクトにまとめます。これは議事録から重要ポイントを要約したり、各種資料のポイントを簡潔にまとめたりするのに役立ちます。論文や調査レポートなどの膨大な情報の消化・理解を助けるため、効率的に情報を収集可能です。
自然言語処理の能力が高い生成AIならではの特色を活かした機能といえるでしょう。
4.文章の言語を変換する
生成AIは入力された文章を自然に他の言語に翻訳するだけでなく、難解な専門用語を一般的な用語に変換することも可能です。大量の翻訳データから言語特性を学習しているため、単純な機械翻訳ではなく前後の文脈を捉えた自然な翻訳文を生成できます。
また、文章中の誤字脱字や文法ミスを見つけ出し適切な表現に修正したり、不自然な表現を指摘したりと校正ツールとしても機能します。現在、ChatGPTが操る言語は30近くにものぼり、今後もさまざまな言語に対応していくと思われるため、グローバル化を目指す企業のマルチリンガル対応業務などに活用できます。
活用シーン1.業務プロセスを効率化する
これまで人が手作業で行っていたメールや文書の作成業務などを生成AIで効率化できます。たとえば、納期に追われがちな企画書や報告書の下書きをあらかじめ生成しておけば、必要に応じて加筆・修正をするだけで作業が完了するので、労力の大幅な削減が可能です。
ほかにも生成AIを使ってプログラムのコーディングを提案させたり、技術文書を自動生成させたりなど、さまざまな業務で活用されています。
活用シーン2.コンテンツ生成を補助する
マーケティング分野でのコンテンツ作成にも生成AIを活用できます。企業ホームページの文章やブログ記事、キャッチコピー、メールマガジンの文面作成など、創造性が必要で時間がかかる業務の大幅な効率化が可能です。
ただし、生成された文章は完璧ではないと理解しておきましょう。とくに専門性をともなう文章については、人間が最終的なチェックを行ったうえで、適宜修正・加筆するようにしてください。
活用シーン3.ビジネス市場の予測や分析を行う
過去の市場データをもとに、将来の市場動向を予測したレポートを生成できます。たとえば過去のトレンドをもとに、販売・需要予測したり顧客の購買パターンを予測したりすることで、効果的なマーケティング戦略の立案に役立ちます。
また、大量の文書データから必要な情報を抽出し、わかりやすくまとめた分析レポートの生成も可能です。こうしたトレンドの分析や市場調査などの分野で、効率的な活用が見込まれています。
活用シーン4.顧客ごとに適した情報や体験を提供する
生成AIをもとにした接客ツールでは、顧客の行動や好みを学習し最適な商品やサービスを提案します。顧客一人ひとりの行動履歴に基づいてパーソナライズされた文章を生成し、きめ細かいサービスの提供が可能です。
たとえば顧客の購買履歴や好みをもとに、関連したオススメ商品を提案したり、課題や悩みをAIが予測して解決策を提示したりなどの活用です。また、顧客からの問い合わせ対応時には対話文に合わせて臨機応変に対処できるため、スムーズなコミュニケーションを実現できます。
活用シーン5.カスタマーサポートを自動化する
生成AIをもとにした接客ツールでは、質問に対する回答文や案内文を自動生成して対応できるため、カスタマーサポート業務を大幅に効率化できます。よくある質問への対応の自動化はもちろん、顧客からの複雑な問い合わせにも自然対話できる柔軟性を持つため、オペレーターの業務を代替する役割が期待されています。オペレーターごとにサポートの質が変わるといった属人的な課題を、生成AIの活用により解決できるでしょう。
現在は、ホームページの情報を生成AIが自動学習して、顧客や求職者に対応する接客型ツールも登場しています。
生成AIをビジネスに導入する4つのメリット
1.アイデアの創出
生成AIは、学習に利用した多彩な情報を組み合わせて新しいアイデアを生み出せます。たとえば商品・サービスの紹介文や企画書、キャッチコピーの作成時に、AIが斬新なアイデアのたたき台を提示します。これをヒントにアイデアをブラッシュアップすることで、革新的な企画が生まれる可能性があります。
製品開発の段階でも同様で、生成AIのユニークな発想を人の思考で発展させれば、イノベーティブな新製品が生まれるかもしれません。
2.コストの削減・生産性向上
文書作成やプログラミングなど、人的リソースを多く要する業務を自動化・効率化できます。たとえば、企画書の下書き文を生成AIが生成し、人の手で最終チェックだけを行えば、従来よりも大幅に工数を削減可能です。
また、プログラムのコーディングを生成AIに任せれば、エンジニアの生産性が飛躍的に向上します。このように人間の補助的役割として活用することで、コスト削減と生産性の大幅な改善を実現できます。
3.従業員のスキル補完
生成AIが従業員のスキルを補完して、組織全体のスキルアップを後押しします。たとえば、Excelの関数の設定やプログラミングなどの専門的な知識が必要な業務においても、精度の高い回答で業務をサポートできます。生成AIを最大限活用すれば、これまで知識や経験が必要だった業務も、誰が担当しても高いクオリティを担保できるでしょう。
人をAIが補完することで、組織全体でスキルの向上が促進されるのです。
4.顧客体験の向上
生成AIをもとにした接客ツールでは、顧客一人ひとりの属性や嗜好に合わせて、最適な回答ができます。ECサイトでは過去の購買履歴からレコメンドメッセージを生成し、きめ細かくパーソナライズした提案を行えます。カスタマーサポートでは、質問内容に対して自然な回答文を生成できるため、スムーズかつ的確な対応が可能です。
このように顧客ごとに最適な体験をいつでも提供できるため、顧客満足度が大きく向上します。
生成AIを利用するうえで知っておきたい3つの注意点
生成AIの導入には多くのメリットがありますが、リスクも把握しておきましょう。利用時のガイドラインを導入前に作成して、適切な運用体制を整えてください。
1.事実とは異なる出力の発生リスク
そもそも、生成AIが学習しているインターネット上のデータすべてが正しいとは限りません。つまり、生成AIは完全に正確な知識を持っているわけではないため、事実と異なる出力(ハルシネーション)が含まれるリスクがあるのです。たとえば存在しない架空の映画のあらすじをもっともらしく回答したり、歴史上の人物のプロフィールが誤った情報で一部出力されたりなどするケースが発生しています。
したがって正確性が求められる文書の作成時には、ハルシネーションの発生に注意が必要です。現状、生成AIの出力は下書きの域を出ず、人の手での事実確認が大前提となります。
2.個人・機密情報の漏洩
ユーザーが生成AIに指示する際入力した情報は再学習に利用される場合があり、個人・機密情報が含まれていると、その情報が別のユーザーに出力されて外部に漏れる可能性があります。
対策は、外部に露出させたくない機密情報を生成AIへの指示に含ませないことです。生成AIのモデルによっては、入力した情報を学習に利用させない設定も可能ですが、機密情報の漏洩は重大なインシデントとなるため、そもそも入力しないのが得策です。
3.著作権など法的な問題
生成AIの著作権などの法的な問題には、大きく3つの側面があります。
- 著作権で保護されているデータを生成に利用すると、著作権侵害のリスクがある。
- 出力物自体に学習データの一部が含まれている可能性があり、その場合の著作権はグレーゾーンになる。
- 生成AIが作り出した出力物の著作権は、誰に帰属するのか曖昧である。
このように著作権の問題には複数の論点があり、未だ法的な整備が不十分な状況です。企業が生成AIを利用する際には、これらのリスクを十分に認識し、適切な対策を講じる必要があります。
生成AI×業務効率化の活用事例
日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスでは、生成AIの導入検討から社内公開まで約1か月という圧倒的なスピードで、環境を構築している点が特徴的です。プラグインを利用して、最新のインターネットの情報を参照できるようにしたり、社内ストレージと連携して社内情報を分析・検索できたりと、生成AIの利便性をさらに向上させるカスタマイズを行っています。
導入当初は営業領域を対象として、集中的なスキル向上・効果検証のために活用しており、今後は各部門にも同様の取り組みを横展開して、会社全体の生産性向上につなげるプランを計画しています。生成AIの活用を社内に浸透させるために、プロンプトエンジニアリング研修を実施するなどの、手厚いサポートも功を奏しています。
参考資料（PDF）：日清食品グループにおける生成AI活用の現在地（経済産業省）
ベネッセホールディングス
ベネッセホールディングスでは、生成AIのビジネス活用で重要なのは「まずAIを使う体験を作ること」だと捉え、社員が自由に使えるAIチャット「Benesseチャット」を導入しました。生成AIの導入担当者が工夫した点を、以下のようにコメントしています。
“まずはスピード感です。生成AIを触ってもらうことなく、可能性を誤解させたり、チャンスを逃したりしたくないと思い、Benesse Chatをいち早く導入しました。使っちゃっていいんだっけ？ と無駄に悩まず、現状維持バイアスから脱するために早くリリースしたんです。”
主な利用範囲は、議事録の要約やアイデアのブレスト、サンプルのプログラムコード生成などです。
さらに対外的な生成AIサービスとして、子どもの自由研究のテーマをナビゲーションする「自由研究お助けAI」をリリースしました。こちらは生成AIの使い方やルールといった、 情報リテラシーを学ぶための教材としての役割も担っています。
島村楽器
島村楽器では、顧客満足度の向上や人的対応が必要な問い合わせ件数の減少を目的に、AIチャットボットを導入しました。営業時間外での問い合わせにも迅速に対応できるため、顧客体験の向上や業務の省力化に成功しています。
AIチャットボットを導入した結果、オペレーターの問い合わせ対応を2～3割ほど削減できました。
参考ページ：サービス総合案内（島村楽器）
生成AIを活用した業種別ユースケース
生成AIの業種別のユースケースを、3つ紹介します。
介護・福祉業
福祉業では施設での見守りや健康管理に生成AIを活用することで、職員の業務負担を軽減できます。利用者個別の行動パターンをAIが分析し、最適な介護計画を立案するなどの応用が可能です。
音声認識AIを使えばケア記録の入力作業が効率化され、記録の正確性も高まるでしょう。他にも、高齢者や障害者の対話パートナーとしてAIを機能させて、孤独感や疎外感を軽減させるなどのケアも期待されます。
製造業
製造業における生成AIの活用は多岐にわたります。工場の生産ラインでは欠陥検査や品質管理が自動化され、不良品の排除や検査工程の効率化が図れます。
また、設備の稼働状況をAIが常時モニタリングすれば、予防保全にも貢献します。さらに生産データを詳細に分析し、工程の最適化案やロス削減策を提案するなど、抜本的な改善策の創出にもつながるでしょう。
建設業
建設業では、生成AIをプロジェクトの進行状況の監視や、遅延によるコストオーバーのリスク予測に活用できます。AIを活用したプロジェクト管理により、進捗トラブルを早期に把握できるため、マネジメント業務を補助する役割として機能するでしょう。
さらに建設資材の需給状況や価格動向をAIが予測・分析し、最適な購買タイミングを提案するなど、コスト管理の面でも活用が期待されます。
生成AIの導入は業務効率化やコスト削減、顧客体験の向上につながる
生成AIは、業務効率化の促進やコスト削減につながるだけでなく、顧客体験も向上させるためビジネスに最適な技術といえます。
弊社も生成AIを活用した接客型MAツール（マーケティングを自動化するツール）「おりこうAIコンシェルジュ」を提供しています。既存のホームページの情報を学習したAIが問い合わせ対応の窓口となり、訪問者への対応を日夜問わず自動化します。
また、訪問者の質問に関連した最適なページへのリンクを自動で紹介したり、ホームページの閲覧履歴を蓄積して分析ができたりと、顧客や求職者の生の声を経営や採用活動に活かせます 。これまでのチャットボットのような事前シナリオの作成は不要で、既存のホームページにタグを設置するだけで導入が完了する手軽さも特徴です。
企業の労働力不足が深刻化するなかで、生成AIの活用はDX化にもつながる有効な経営戦略となるため、ぜひ導入をご検討ください。
