新卒の通年採用とは? 拡大の影響と中小企業へのデメリット、対策を解説
経団連の方針により、2022卒の学生から大企業の通年採用が解禁されることになりました。
ですが、通年採用の拡大は学生・求職者や大企業にはメリットが大きい一方、中小企業の採用活動にはデメリットも生じてしまいます。
今回は「通年採用とは何か?」という基本から、通年採用の拡大でなぜ中小企業の人手不足が加速する懸念があるのか、中小企業がコストを節約して通年採用を実施する方法をご紹介します。
目次
[非表示]
- 通年採用とは?
- 通年採用の拡大で学生には多くのメリットが生じる
- 中小企業にとっては、大企業の通年採用拡大は大きなダメージになる
- 通年採用拡大による中小企業へのデメリット1.学生の内定辞退の増加
- 通年採用拡大による中小企業へのデメリット2.採用コストの増加
- 通年採用拡大による中小企業へのデメリット3.社員の質の低下
- 中小企業が通年採用を低コストで実施する方法とは?
- 中小企業の通年採用戦略1:Googleしごと検索などの無料求人メディアの活用
- 中小企業の通年採用戦略2:自社の企業ホームページ、採用サイトの活用
- 採用コストを節約しながら、通年採用拡大に対応しよう!
- あわせて読みたい記事
- 国産Webサイトサービス満足度No.1のおりこうブログで、自社サイトを開設・リニューアル!
通年採用とは?
近年になって新卒一括採用のデメリットが大きくなり、通年採用が注目されている
通年採用とは、新卒一括採用にこだわらず企業が年間を通して採用応募を受け付ける採用形式のことです。
大企業の新卒採用はこれまで応募時期を限定した一括採用が一般的でした。しかし近年になって一括採用のデメリットが表面化したことで、通年採用にシフトする企業が増加しています。
【新卒一括採用のデメリット】
- 就活シーズンが限定される一括採用では、海外に留学している学生が不利になり、企業側もそのようなグローバルに活躍できる人材を採用できなくなる
- 外資系企業や経団連に所属していない大企業はこれまでもシーズンに関係なく採用をおこなっていたため、優秀な人材がそれらの企業に流れてしまう
- 学生側は限られた期間で就職活動を進める必要があるため、入社する会社の吟味や選択が不十分になる
すでに多くの会社が通年採用を実施しており、2022年卒からは経団連所属企業でも通年採用が解禁される
以上の理由をかんがみて、経団連の中西会長は通年採用の拡大を発表し、大学側とも合意を取り付けました。
2022年卒業以降の学生については、この新ルールが適用されることになります。
また、マイナビの調査によれば、2019年入社の新卒採用ではすでに25.5%の企業が通年採用や秋採用を実施しており、以下のような著名な企業もそのなかには含まれています。
- ファーストリテイリング
- 楽天
- リクルート
- Yahoo!
今後の通年採用の拡大でこの割合は急増していくことでしょう。
通年採用の拡大で学生には多くのメリットが生じる
通年採用の拡大には「就職活動の早期化・長期化が進行し、学業がおろそかになるのではないか」との懸念も一部では呈されていますが、学生にとっては留学などに行きやすくなり、入社する会社をじっくりと吟味する余裕が生まれます。
通年採用は学生にとってはメリットが大きい制度だといえるでしょう。
中小企業にとっては、大企業の通年採用拡大は大きなダメージになる
ただし人材不足に悩む中小企業にとっては、「大企業の通年採用拡大によってさらに人材不足が深刻化するのでないか」との不安の声も出ています。
なぜ通年採用の拡大が中小企業の人材不足を加速させるのか、その理由を見ていきましょう。
通年採用拡大による中小企業へのデメリット1.学生の内定辞退の増加
通年採用拡大後、学生は大企業の入社試験にいつでもチャレンジできるようになる
通年採用が拡大すれば、学生は入社するのに納得できる会社をじっくりと探せることになります。
これは一面では、ミスマッチを減少させ入社後の早期離職を抑制できるというメリットもあります。
しかし、中小企業にとっては内定辞退率の急激な上昇が懸念されています。
通年採用拡大によって学生は中小企業の内定を得たあとにも、いくらでも大企業の入社試験にチャレンジできるようになるからです。
これまでは大企業の採用シーズンが終了したあとに中小企業が本格的な採用活動をスタートさせることで、時期の住み分けができていました。
ですが、その状態でも中小企業での内定辞退率は決して低くなかったことについては、人事に携わった経験のある方なら痛感されていると思います。
マイナビの調査によれば、2018年卒のデータでは「内定辞退率が全体の3割以上あった」と回答した非上場企業(中小企業)は53.8%にものぼりました。
従業員数が300人以下の小規模企業に限れば、この割合はさらにハネ上がるでしょう。
通年採用拡大後は、「中小企業の内定は、大企業の内定を得るまでの滑り止め」との傾向がより深刻化する
大企業の通年採用が拡大したあとはこの状況がさらに悪化して、「中小企業の内定は大企業に受かるまでの滑り止め」として考える学生が続出するでしょう。
給与・福利厚生・労働環境・安定度を総合的に考慮すると、大企業が学生に選ばれがちなのは無理からぬことではあります。
ですが、これにより大企業への人材集中がいっそう進むことになり、内定辞退が多発した中小企業では人材不足が加速するでしょう。
実際、SankeiBizの『通年採用拡大 人材獲得競争激化、中小に危機感』という記事では以下のような中小企業経営者の声が紹介されています。
『一方、中小企業の採用活動には影響が出そうだ。機能性衣料を開発するミツフジ(京都府精華町)の三寺歩社長は「学生の多くが大企業に流れるのでは」と懸念する。油圧機器製造の今野製作所(東京都足立区)も「ここで働きたいと思える魅力を打ち出さないと」(今野浩好社長)と危機感を口にする。』
新入社員確保が格段に難しくなるため、中小企業には人手不足倒産の危険すら出てきます。
※人手不足倒産については、以下のページで詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
通年採用拡大による中小企業へのデメリット2.採用コストの増加
通年採用拡大で有料採用ポータルサイトや求人広告への掲載費用が高くなり、採用担当者の負担も重くなる
新卒の就活シーズンが限定されていることで、これまで中小企業が有料採用ポータルサイトや求人広告に支払う費用は節約されていました。
しかし、通年採用を実施して有料採用ポータルサイトや求人広告の掲載期間が長期化すれば、そのぶんコストも高額になります。
また、人事・採用担当者の業務負担も大きくなるでしょう。
これまで限られたシーズンだけ採用活動に打ち込めばよかったのが、通年採用実施後は一年中休むことなく採用活動に手を取られることになります。
人事・採用担当者の疲労も蓄積されますし、残業代などの人件費も増加するでしょう。
なお、中小企業では人事専任の社員がおらず他の業務と兼任していることが多いので、その他の業務の遂行にも支障をきたします。
すでに中小企業の採用担当者からは「通年採用を実施する体力はない」との嘆きの声も
中小企業ではこれらの採用コストが負担できず、人材難に陥る可能性が高くなります。
2019年4月23日の毎日新聞の記事には、以下のような中小企業採用担当者のコメントが掲載されています。
※なお、注目していただきたい部分を弊社側で赤字にしております(これ以降の引用部分でも同様)。
『一方で、通年採用は学生の「大企業志向」に拍車をかけるとも指摘される。
学生が大企業の採用試験に挑戦する機会が増えれば、中小企業の採用が一段と不利になる懸念がある。
東北地方の電子部品会社の担当者は「我々のような中小に通年で採用活動を行う体力はない。大企業の内定時期が前倒しされれば、中小の人材確保はますます難しくなる」と嘆く。』
愛媛県内の企業へのアンケートでは約4割が「通年採用拡大で採用活動が難しくなる」と回答 「容易になる」との答えはゼロ
また、愛媛新聞が実施したアンケートでも通年採用拡大で中小企業の採用活動が困難になる懸念が如実に示されています。
『現行の就活では、大企業の後に中小企業という日程のすみ分けが機能している面もある。学生優位の売り手市場が続く中、大手が相次いで通年採用に乗り出せば、中小の人材確保が一層困難になりかねない。愛媛新聞が実施した県内222社アンケートでも、指針廃止を受け、約4割が採用活動が「難しくなる」と回答。「容易になる」との答えはゼロだった。』
以上のように、通年採用の拡大は中小企業の採用コストの増大を招き、より人材不足が加速する可能性が高いのです。
※なお1人あたりの採用コスト(採用単価)で見ると、現在でもすでに中小企業は大企業よりも高い金額を支払わないと人材を確保できない状況です。詳しくは以下のページをご覧ください。
通年採用拡大による中小企業へのデメリット3.社員の質の低下
通年採用拡大は優秀な人材の大企業への集中を激化させ、有望な学生はいっそう中小企業には集まらなくなります。
就活時期が限定されていれば「他の企業は応募をすでに打ち切っているし、この会社に決めよう」という学生が一定数存在していましたが、通年採用拡大後はあわてて就活を終了させる必要がなくなるからです。
これにより「中小企業だが優秀な学生をたまたま獲得できた」というラッキーなことが起きる確率も格段に下がります。
以上の理由から通年採用拡大後には、中小企業では優秀な人材の払底と社員の質の低下が起きる可能性があります。
社員の質の低下は会社の成長率の鈍化を招き、じわじわと会社の活力と将来性を奪っていきます。
中小企業が通年採用を低コストで実施する方法とは?
ここまでご説明してきたように大企業の通年採用拡大は中小企業にとってはデメリットが大きく、採用活動の難航が予想されます。
手をこまねいているだけでは人材不足が今以上に深刻化し、人手不足倒産の危機に瀕してしまいます。
それでは、通年採用拡大に中小企業がどのように対応していくべきかを具体的に解説します。
中小企業の通年採用戦略1:Googleしごと検索などの無料求人メディアの活用
Googleしごと検索などの無料求人メディアなら、採用コストを節約して通年採用を実施できる
通年採用の拡大が、中小企業へもっとも直接的な影響となる採用コストの増加でしょう。
通年採用を実施すると、有料採用ポータルサイトや求人広告への掲載期間が延長されますから、そのぶん採用コストが大きく膨らみます。
この点を懸念して、通年採用になかなか踏み切れない中小企業も多いのではないでしょうか?
そんな状況を打開する可能性があるのがGoogleしごと検索などの無料求人メディアの活用です。
Googleしごと検索では、世界最大の検索エンジンであるGoogle上に自社の求人情報を無料で掲載できます。
このような無料求人メディアをフル活用すれば中小企業でも採用コストを抑えて、通年採用の実施が可能になります。
無料求人メディア・Googleしごと検索の表示画面
ただし、中小零細企業をターゲットに無料で勧誘して高額請求する求人広告サイトが増加中
ですが、これらの無料の求人メディアを使う際にご注意いただきたい点があります。
人手不足で困っている中小零細企業をターゲットに、最初は無料と説明しておきながら、あとで高額請求する求人メディアが急増しているのです。
毎日新聞は『求人サイトトラブル数百件 無料と勧誘、後日高額請求 氷山の一角か』というタイトルの記事で以下のように報道しています。
「インターネットの求人広告サイトに無料で掲載すると勧誘され求人を出した事業者が、一定期間後、サイト運営会社から「有料期間になった」として、高額な掲載料を請求されるトラブルが相次ぎ、全国150人以上の弁護士に相談が寄せられていることが明らかになった。
人手不足に悩む零細事業者がターゲットになっており、弁護士らは「判明したトラブルは氷山の一角にすぎない」と注意を呼びかけている。(中略)
寄せられた相談は、電話で無料掲載を承諾したら2~3週間後「期限までに解約しなかったため自動更新され有料になった」として数十万円請求された――というのが共通パターンで、昨秋以降急増。
事業者側は「自動更新の説明がなかった」「期限ぎりぎりに解約の書類が届いた」などと訴えるが、実際に支払ったり、断ったためにサイト運営会社側から裁判を起こされたりした事業者も少なくない。中には複数件の求人分として200万円以上請求された例もあった。 」
また、この問題に取り組んでいる高良祐之(たからゆうじ)弁護士によれば、「全国規模だと数千人がトラブルになっていると思われる」とのことです。
毎日新聞の調査では、これらの悪質な求人広告サイト運営会社の多くはこの1年以内に設立されているとのことなので、耳慣れない会社から「無料で求人広告を出しませんか?」と勧誘電話があった際はぜひ注意して内容を吟味しましょう。
安全に採用活動をおこないたい方は、まずはGoogleしごと検索やIndeedなどの大手の求人メディアをご利用ください。
中小企業の通年採用戦略2:自社の企業ホームページ、採用サイトの活用
有料の求人広告やテレビCMを活用しづらい中小企業にとって、企業ホームページや採用サイトは極めて重要なメディア
採用活動を低コストで実施するには、自社の企業ホームページや採用サイトの活用も有効です。
有料採用ポータルサイトや求人広告とちがい、社内でページ追加などをおこなえば無料で情報量・集客力を増強できるからです。
大企業のように求人広告や新卒向けのテレビCMなどを利用しづらい中小企業にとって、企業ホームページ・採用サイトは数少ないPR手段です。
採用関係のコンテンツを充実させたうえで、各ページにはSEO(検索エンジン最適化)対策を施して直接集客も狙おう
採用サイト・採用ページでは先輩社員へのインタビューや1日の流れなどのコンテンツを充実させて、学生が業務をイメージしやすいようにしましょう。
また、採用ページのtitleタグには勤務地の地名や正社員などの勤務形態をかならず入れて、検索エンジン経由の集客数を少しでも向上させてください(SEO対策)。
※検索エンジンで上位を狙いやすくクリックされやすいtitleタグの付け方については、以下のページをご覧ください。
商品・サービスの紹介ページをわかりやすく書き、充実化させるのも有効
また、採用サイト・採用ページだけでなく、企業ホームページ自体を充実させるのも重要です。
企業ホームページの全体の情報量が充実化すれば、採用サイト・採用ページも検索エンジンから高評価されるようになり、検索順位も向上します。(企業ホームページと、採用サイト・採用ページのドメインが同一である場合のみ)
また、応募先を選んでいる学生や求職者は「その会社はどんな商品・サービスを提供しているのか?」「その商品・サービスのメリットや強みは何なのか?」をかならずチェックします。
商品・サービスの情報を理解しなければ企業研究ができませんし、他社と比較した際の強みが不明だと志望動機も薄くなってしまうからです。
商品・サービスの紹介ページはメインターゲット層にあわせて作るのはもちろんなのですが、就活生や求職者が読んでも理解できるようにわかりやすく書いていきましょう。
就活生・求職者が採用応募しやすくなるうえに、会社・業務への理解度が高まるのでミスマッチによる早期離職のリスクも下がります。
コンテンツ増強で売上げが増加すれば、給与を増額して社員獲得の可能性をより高められる
そしてもちろん、企業ホームページの商品・サービス紹介ページの情報を豊富にすれば、メインターゲットである見込み客へのPR力も強化されます。
豊かな内容でわかりやすく書かれたコンテンツは検索エンジンからも高評価を受けるので、集客効果がアップして売上げ増大にもつながります。
売上げが増加してそのぶんを初任給や社員の給与に反映できれば、新入社員を獲得できる確率はさらに高まるでしょう。
給与を増額できれば既存社員の転職による流出も抑制できるので、Webを利用した売上げアップは必須
就活生や求職者も労働者であるまえに、自分や家族の生活を支えなければならない個人ですから、給与額は応募のモチベーションに大きく関わります。
また、社員が離職を考えるきっかけの第1位は「給与が低いこと」なので、給与の増額は今在籍している社員の流出を防ぐのにも有効です。
社員の給与アップに回す原資を稼ぐためにも、企業ホームページのコンテンツは充実化させましょう。
※どんなコンテンツを追加すれば集客できるのかについては、以下のページをご覧ください。
採用コストを節約しながら、通年採用拡大に対応しよう!
以上が、中小企業が低コストで通年採用を実施するための方法です。
大企業の通年採用拡大に対して中小企業が無策で臨めば、採用活動は確実に厳しくなり人手不足が深刻化します。
ぜひ、このページで紹介したような手法を駆使して通年採用拡大に対応してみてください。
まずは中小企業でも安心して使えるGoogleしごと検索の利用から始めることをオススメします。