世界・日本国内のメタバース開発・制作・関連企業の事例一覧を紹介
更新日:2024.07.04
近年、世界中から注目を浴びている仮想空間メタバース。
これまで空想の域を出なかったSF世界のようなバーチャル体験が現実味を帯び始めています。
今後のさらなる拡大が予想されるメタバースビジネスにおいて、世界・日本国内でメタバースサービスを提供している企業の事例を一覧で紹介します。
メタバースを自社でも活用したい方は、ぜひご覧ください。
目次
メタバースとは?
メタバースとはユーザーが設定した分身である「アバター」を介してアクセスすることで、サービスの利用や他のユーザーとのコミュニケーションができるインターネット上の3次元仮想空間です。
メタバースは「meta(超越)」と「universe(宇宙)」を組み合わせて生まれた造語であり、SF小説『スノウ・クラッシュ』に登場する仮想空間に由来しています。
メタバース内の3次元仮想空間では、自宅にいながら多彩な体験や活動が可能です。たとえばゲームやSNS、ライブやイベントへの参加、ショッピング、観光などです。視界すべてを仮想空間で覆うVR(バーチャルリアリティ)ヘッドセットを装着することで、高い没入感とリアルに近い感覚を味わえます。
多くのメタバースプラットフォーマーは仮想空間内に経済圏の創出を図り、現実生活の一部(働く・遊ぶ・交流する)をメタバースに置き換えることを目標としています。
参考ページ:VR(バーチャルリアリティ)とは? 意味や仕組み、ビジネス活用事例
参考ページ:VR(バーチャルリアリティ)とは? 意味や仕組み、ビジネス活用事例
※なお、弊社ディーエスブランドでは大企業だけでなく、中小企業・団体でも手軽に使えるメタバースソリューション・おりこうブログCXを提供しております。ご興味のある方はぜひ以下より資料をご覧ください。
海外のメタバースサービス・企業5選
はじめに海外発でメタバースを展開しているサービス・企業を紹介します。
Horizon Workrooms (Meta社)
メタバースに高い関心を示すMeta社(旧Facebook社)が開発・展開している“ホライゾン”シリーズのビジネス向けサービスです。2021年にリリースされた、バーチャル空間内でアバターを用いて複数人同時に会議ができるバーチャルワークルームです。
アバターが立ち上がって目を合わせて身振り手振りをしながら話したり、ホワイトボードに文字を書いたりと参加者同士がまるで同じ空間にいるかのようなリアリティを得られます。
また空間内でのファイル共有も行えて、会議やプレゼンテーション、資料の共有に至るまで一貫して行える点が特徴です。従来のリモート会議と比べて、参加者同士がアバターを介してリアルに近い距離感を感じながら会話できることは、大きく異なる点です。
Horizon Workrooms は“バーチャル空間で働く”というまさしく「未来の働き方」の実現を目指したモデルともいえるでしょう。
同社が販売しているVRデバイスのヘッドマウントディスプレイMetaQuest2を装着することで視界すべてが仮想空間となり、最大限の体験を得られます。2022年のWeb版リリースに伴って機能に制限はありますが、パソコンやスマートフォンからでもワークルームへの参加を可能としました。
対応デバイスの拡充によって、VR機器を持たないユーザーへのサービスの普及が期待されます。
Meta社はメタバース事業が将来的にはSNSを超えるビジネスとなりうる可能性に期待しています。2021年の社名変更からもわかるように、メタバースファーストの企業を目指す意志を示したのです。
その点からメタバースの先行プラットフォーマーの座を狙うMeta社はメタバース分野において、今後の舵取りを担うことでしょう。
The Sandbox (TSB Gaming社)
アメリカで人気のThe Sandboxは、TSB Gaming社からリリースされたPC用ゲームです。
“ゲーム”という分類ではありますが、これまでの一般的なゲームとは違い目的やゴールはありません。
ユーザー主導のゲームで、メタバース空間内の好きな場所を訪れそれぞれが自由に活動しています。ユーザーであるクリエイターが、ゲーム内で作成したアイテムやキャラクターを仮想通貨(SAND)で売買でき、現金化を前提とした取引が可能です。
つまり「ゲームを遊んで稼ぐ(Play to Earn)」という新たなビジネスモデルが確立されています。
以前にも仮想通貨システムを用いたゲームとしてSecond Lifeが存在しました。Second Lifeも空間内の土地の売買などで「ゲームで稼げる」と一時的に流行したものの技術的な課題などがネックとなり、活発なビジネスとまでは至りませんでした。
参考ページ:Second Life(セカンドライフ)とは? メタバースとの違いを解説
しかしThe Sandboxは、ゲーム内の取引に新技術であるブロックチェーンを利用したNFT(非代替性トークン)や仮想通貨を用いています。この技術により信頼性が高く安全な取引を実現でき、The Sandboxはメタバースとビジネスを紐付けるプラットフォームとして注目されています。
ゲームをプレイするには仮想通貨の口座開設や、ウォレットアプリの設定が必要です。こういったゲームをスタートするまでの敷居の高さはありますが、今後の新たな経済市場となることを見据えてadidasやGucciなどの企業も参入を始めました。
参考ページ:メタバースとNFT・暗号資産(仮想通貨)・Web3の関係を解説
Fortnite (Epic Games社)
アメリカのEpic Gamesが運営するFortniteは、プレイヤー同士が生き残りをかけて勝敗を争うバトルロイヤルゲームです。2017年にリリースされ、ゲーム機はもちろんスマホからでも基本プレイ無料で遊べます。
子どもから大人まで楽しめるゲーム性やコミュニティ要素も豊富な点が支持されており、現在では4億人を超えるユーザー数を持つ巨大なコンテンツです。
「これまでのゲームと同じでは?」と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、同社CEOは「メタバースを目指している」と公言しており、ゲーム界でのメタバースモデルとして率先しています。建築というクリエイティブ要素もあり、ゲームという壁を超えたコミュニケーションツールとしての可能性も秘めています。
参考書籍:『60分でわかる! メタバース 超入門』 メタバース参考書籍レビュー
またゲーム内で米国の人気ラッパーであるトラヴィス・スコットがバーチャルライブを行い、同時接続数が1230万人を記録したり、日本では米津玄師や星野源がバーチャルライブを行ったりと話題性に事欠かない存在です。
Fortniteにはメタバースを構築するための要素技術が多く親和度も高いことから、ゲーム自体がメタバース化しているともいえるでしょう。
VRChat (VRChat社)
「ソーシャルVR」というジャンルで2017年リリース当初から、根強い人気を誇っているのがVRChatです。対応デバイスはPCとVRデバイスで、より没入感のあるVRゴーグルを装着することによりVRChatの世界を最大限に堪能できます。
新規ユーザー拡大に向けて現在(2023年4月時点)はまだ未実装ですが、スマホへの対応も発表されました。
VRChat内はワールドと呼ばれる多数のメタバース空間で構成されており、ユーザーがアバターを介して好きなワールドを訪れることが可能です。このワールドは自作も可能で、オリジナルのワールドを作って友人と交流したり、世界中からユーザーが遊びにきてくれたりします。
アバターを操作して豊富なコミュニケーション要素を用いて交流を楽しむ「バーチャルSNS」として、クリエイターも多く活動しておりコアユーザーが多い点が特徴です。SNSにゲーム要素を組み合わせた次世代SNSとして個人ユーザーだけでなく、企業からの注目度も高いプラットフォームです。
ワールドの居心地の良さからか、まるで仮想空間内に住んでいるかのように長時間ログインして過ごしているユーザーも存在します。
またVRChat は従来のSNSのように友人と交流するだけでなく、一緒に音楽ライブやバーチャルマーケットに行ったり、出展している企業のイベントを観覧したりと、十人十色の楽しみ方を演出してくれます。
メディアでも話題になった出展例として日産自動車は、新型軽EV「日産サクラ」の発表会を開催し、メタバース空間での試乗会まで行われました。
VRChatのようにバーチャル空間でもう一人の自分の時間を楽しむことができるのも、メタバースの醍醐味でしょう。
Virtual People (スタンフォード大学)
ここで教育分野において、VRゴーグルを用いたメタバース活用事例を紹介します。
アメリカのスタンフォード大学で2021年から導入されたVirtual Peopleは、実施されている授業のほぼすべてでVRを活用する講義です。現在の産業においてVR技術がどのように普及・進化してきたのかを体験し、バーチャル空間内でグループディスカッションも行われます。
実際には体験できない過去の世界や人種差別を受けた男性の人生体験を再現することで、環境意識や人種的寛容さについても学べる学習コンテンツです。
Virtual Peopleはメタバースの要素としては限定的ではありますが、同時に複数の参加者が学ぶ場である学校をメタバース化した事例とされています。
学校のメタバース化は、不登校支援や遠隔地からの参加を可能にするメリットも生み、教育分野でのメタバースの効果的な活用事例となるでしょう。
日本のメタバースサービス・企業5選
ここからは日本発のメタバースを展開しているサービス・企業を紹介します。
cluster (クラスター株式会社)
公式サイト:https://cluster.mu/
「バーチャルSNS」であるclusterは、クラスター株式会社が手掛ける日本発のメタバースプラットフォームです。
アバターを作成してワールド内でユーザー間の交流やバーチャルイベントを楽しむメタバース空間の創造を目的として、2017年にスタートしました。
VRゴーグルやパソコンはもちろん、スマホからでもメタバース空間にアクセスできる無料サービスで、その手軽さから人気を博しています。
ユーザーは自分だけのワールドと呼ばれる空間を構築したり、バーチャルイベントのチケット販売などによるマネタイズシステムも用意されていたりと、独自の生活圏や経済圏の創出といったメタバースの思想を強く意識したサービスといえるでしょう。
公式サイトの「何をしてもいい。何もしなくてもいい。あなたがもっと、あなたらしく生きるために。」の紹介文はメタバースの目指すビジョンとも重なります。
clusterのワールドで代表的なものは、渋谷区とKDDI株式会社などで運営する「バーチャル渋谷」が挙げられます。現実の渋谷の街をメタバース空間にそのまま再現したものです。アバターを介してアーティストのバーチャルライブやアート展示会など、実際の渋谷で開催されていたイベントを仮想体験できます。
多様な企業のビジネス活用事例が生まれているclusterは、数少ない日本発のメタバースプラットフォームとして世界からも注目を浴びています。
バーチャルマーケット (株式会社HIKKY)
公式サイト:https://www.hikky.co.jp/
株式会社HIKKYは、誰もが自由に創造しアクセスできるオープンなメタバースを目指して設立されました。
メタバースの企画・プロデュースや独自のメタバースソリューションの提供を主要事業としています。メタバース空間の生活圏や経済圏を発展させ、人が持つクリエイティビティを活かせる社会を目指している企業です。
とくに同社が2018年からVRChat内のメタバース上で開催しているバーチャルマーケット(Vket)には、世界中から100万人以上がメタバース空間に集まる世界最大規模のバーチャルイベントへと成長しています。
現実の世界各地の都市をメタバース空間内にパラリアル化して再現することで、距離や時間の概念にとらわれないリアルとメタバースの共創を実現しました。バーチャルマーケットには多彩な企業が出展しており、インフラ・金融・アパレル・小売などさまざまです。
たとえばメタバースでの商品販売に高い関心を示すアパレル大手BEAMSは、同マーケット内にバーチャル店舗を展開しています。
現実の店舗で販売中の商品を3Dモデルで作成して、バーチャル店舗でもアバターの衣装用にデジタルツイン商品として販売されました。アバターと現実の自分のスタイリングをリンクすることで、バーチャルとリアルの垣根をなくしたファッションの楽しみ方を演出しています。
バーチャルとリアルを効果的に融合した例として、メタバースの新たな可能性を感じさせました。
REV WORLDS (株式会社三越伊勢丹ホールディングス)
REV WORLDSは三越伊勢丹ホールディングスが提供している仮想都市のコミュニケーションプラットフォームです。
老舗百貨店の伊勢丹新宿店をバーチャル化して歴史ある外観を再現しつつ、店内ではバーチャルならではの空間を演出するショップも展開されました。
スマートフォン専用アプリとして提供されており、いつでも誰でもかんたんにメタバース空間にアクセス可能です。
豊富な着せ替えが可能なアバターやオリジナルのマイルーム作成機能などがあり、ゲームのような感覚で楽しめる工夫が施されています。
REV WORLDSの店内にはデパ地下やファッション、ギフトなどさまざまなショップが出店しています。
仮想ショップ内に展開の3Dモデル商品は、実店舗に販売されているものと同じ商品が並び、そのままオンラインストアに移行して購入も可能です。
通常のネットショップと異なり、離れた場所にいる友人家族と一緒に会話しながら、メタバース上でショッピングを楽しめます。
また日本赤十字社との協働で、防災の意識向上と災害への備えという行動を促すことを目的とした地震バーチャル体験コンテンツも空間内で実施されています。
このようにメタバースを利用すれば新たな顧客層を生み出すだけでなく、REV WORLDSのように工夫次第では社会貢献にも寄与できるでしょう。
おりこうブログCX (株式会社ディーエスブランド)
弊社ディーエスブランドでも、中小企業・団体でも利用しやすいメタバースソリューション「おりこうブログCX」を提供しています。企業のホームページに独自のメタバース空間を構築して、サイト訪問者にインパクトのある体験価値を届けます。
専用アプリのインストールは不要で、スマホやPCのWebブラウザのみで手軽に体験できるハードルの低さも特徴です。
メタバース空間は通常のWebサイトより没入感が高く空間内を回遊してもらえるため、掲載しているコンテンツも閲覧されやすくなります。メタバースを活用すれば人材採用や情報発信において従来よりも訴求力を高められるでしょう。
弊社の採用サイトにも職場見学と題したメタバース空間を体験できるページを設置したところ、訪問者は弊社への関心が高まり結果として求人の応募数が増えるなどの効果が表れています。
建築業向けにはメタバース空間に自社オリジナルのバーチャル住宅展示場やモデルハウスを構築することも可能です。実際のモデルハウスに訪問しているような、臨場感のあるバーチャル内見をいつでもどこからでも提供します。
現実の住宅展示場への出展やモデルハウスの建設には莫大な初期費用と維持費がかかりますが、住宅展示場メタバースであれば、それよりはるかに低価格で運営ができるようになりました。
またビジネス分野でメタバースを活用すると、以下のようなメリットを得られます。
- より効果的な採用活動・求人を実施できる
- 新たな販促活動やマーケティングに利用できる
- 現実の会場を用意・維持するコストや手間が不要になる
- 現実世界で障害やハンディキャップを抱えた方もメタバース上の接客などで活躍しやすくなる
- ブランディングと、他社との差別化につながる
上記のメリットをふまえてメタバースを自社でも手軽に始めたい方は、ぜひ以下から「おりこうブログCX」の詳細をご覧ください。
まとめ
多くのメタバース企業が目指すビジョンとは人々の日常にメタバースが浸透し、生活の一部として自然に利用されるようになることです。
現在、スマホやSNSをはじめとしたデジタル市場は成熟してきており「次のビジネスの中核になるプラットフォーム」を企業が求めている側面もあるでしょう。
かつてのインターネットやスマートフォンがその道を歩んできたように、メタバースも同じような革新を世界にもたらし「3次元のインターネットがネット上に生まれる」とされています。
メタバースが普及すれば遠隔でのコミュニケーションや新たなビジネスの展開、新しい形でのエンターテインメントの提供が可能になり、今後ますます重要な役割を担うことが予想されています。
いかに世代や格差を超えて広く社会に受け入れられるか、そして多くの人が使いたいと思えるサービスを生み出していけるかがメタバース普及における重要なポイントとなるでしょう。
この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。