Second Life(セカンドライフ)とは? メタバースとの違いを解説
近年、世界を賑わせているメタバース。さまざまな分野でメタバースを活用する動きが活発になっており、将来はメタバースが生活の一部を担うとも言われています。
その過程でメタバースの先駆者とも称されるSecond Life(セカンドライフ)が、近年また話題にのぼっています。
「メタバースとよく比較されるけど、そもそもセカンドライフって何だろう?」「過去に流行ったのは知っているけど、セカンドライフとメタバースとの違いは知らない」
そのような疑問をお持ちの方に両者の違いを、わかりやすく解説していきます。
目次
セカンドライフとは?
「Second Life(セカンドライフ)」は2003年に、米リンデンラボ社からリリースされたソフトウェアです。
3DCG※により構成された仮想空間で生活できるソフトウェアで、現在では「メタバースの先駆け」ともいわれています。
空間内でユーザーがアバター(分身)を作成して、ゲーム内で世界中を観光したり、他ユーザーとコミュニケーションを取ったりと自由度の高さが特徴です。
また「仮想的通貨」も存在したことが、メタバースの先駆けの所以となっています。
一般的なゲームには制作側の意図した「目的」が設定されていますが、セカンドライフでは、その「目的」すらも自由でした。
コンテンツのほとんどをユーザーが作成していて、当時としては他に類を見ない先進的なゲームという印象を世界に与えました。
※3DCGとは3次元コンピュータグラフィックスの略称で、「縦」、「横」、「奥行き」のある立体を表現するための画像を作る手法
なぜセカンドライフは注目されたのか?
ブームのきっかけは、セカンドライフ内での不動産売買で100万ドル(約1億1000万円/当時)の利益を得た、アンシェ・チェン氏のメディア露出でした。
セカンドライフで大きなビジネスが展開できると示された瞬間です。
国内では2006年末に新聞の一面で報じられてから、セカンドライフを耳にする方も増えたのではないでしょうか。
当時の日本では、SNS「mixi」が全盛期(アクティブユーザー数は約600万人)で、いわゆる「web2.0※」ブームの最中です。
セカンドライフ流行によるユーザー数の増加とともに、空間内で商品を作成・売買するクリエイターも誕生しました。
このブームを発端として広告効果や経済効果を期待した企業が、こぞってセカンドライフ内に進出しました。
国内ではトヨタや東芝、国外ではDELLやReebokなどが主な参入企業です。
メディアの力も加担して、セカンドライフ流行のニュースは世界中で報道され、結果的に注目を浴びることになったのです。
※web2.0とは普及初期のWebにはない新しい技術や仕組みで、その発想に基づいたWebサービスなどの総称
セカンドライフは何ができるのか?
セカンドライフの空間内は、ストーリーや目的はないオープンワールドで、世界のほぼすべてがユーザーの手によって作成されます。
「仮想世界の構築」・「自由度の高さ」・「経済圏の創出」といったコンセプトをもとにユーザーが住んでいる世界となります。
街や建物を再現する人、商品や土地を売買する人、ライブイベントを主催する人、とクリエイターの規模はさまざまです。
売買により得たゲーム内通貨「リンデンドル」は、米ドルにも換金可能な仮想的通貨であり、現在では主流となるインターネットを用いて収入を得るビジネスモデルが確立されました。
このように現実世界と類似したセカンドライフとは、まさに「第2の人生」を楽しむことでした。
セカンドライフの人気が衰退した理由
衰退した主な理由として、参入に対して高い壁があったのです。
なかでも操作端末は、ごく限られた高性能なパソコンが当時は必要でした。ログインできても操作方法が複雑で、すぐにやめてしまうユーザーも続出しました。
また通信速度も光回線はまだ現在ほど普及している状態ではなく、3DCGをリアルタイムで表現するには回線の速度が不十分だったのです。
1つのシムと呼ばれるワールドでは同時に最大50人までしか世界に入れなかったり、同じ時刻にユーザーが集まれるような仕組みもなかったりといった、ソーシャル的要素の狭さも指摘されています。
以上の課題をクリアしても、「何をやってもいいがゆえに、何をやったらいいのかわからない」という本末転倒な事態になるユーザーも現れました。
蓋を開けてみるとユーザーが離脱しやすい要素をはらんでいたため、2007年の爆発的な人気から一転、わずか1年ほどで国内ユーザーは激減しました。
こうしたユーザー数の減少にともない、参入企業も続々と撤退をはじめ、衰退していきました。
「ゲーム」という垣根を超え、先進的で唯一無二の存在であったセカンドライフ。「早すぎたメタバース」と意訳される理由にもうなずけます。
メタバースの流行で復調の兆しも見せるセカンドライフの様子
「セカンドライフは終わった」とのイメージを持っている方も多いかもしれませんが、現在も精力的にサービスを継続しています。
ブームが去ったあとも、コンセプトに面白さを感じていたユーザーは残り、淡々と活動を続けたのです。
2021年時点でも毎日20万人のアクティブユーザーがいて、年間3億4500万件以上の取り引きが行われています。
クリエイターへの報酬は年間8,040万ドル以上(約104億円)にものぼります。「衰退した」とされるプラットフォームでありながら、まだまだ莫大な市場です。
近年メタバースが注目されるようになり、セカンドライフは再び脚光を浴び始めています。
2022年時点では無料プランもあり、アカウント登録後にソフトダウンロードを行えばプレイ可能です。
VR機器も必須ではなく、ノートパソコンでも体験が可能です。
参考動画:Second Life Destinations - What the Buzz
メタバースとは?
「メタバース(metaverse)」とは、「meta(超越)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。
ユーザーが設定した分身である「アバター」を介して仮想空間にアクセスすることで、提供されるサービスの利用や、他のユーザーとコミュニケーションを図ることができる、インターネット上の仮想空間の総称です。
語源は、1992年にアメリカのSF作家ニール・スティーヴンスンが発表した作品『スノウ・クラッシュ』に登場した「ネット上の仮想世界」とされています。
現在、メタバースに厳密な定義はありません。ここでは、メタバースの定義として「誰もが現実世界と同等のコミュニケーションや経済活動を行うことができるオンライン上のバーチャル空間」としています。
メタバースでは何ができるのか?
メタバースでは、バーチャル空間内で誰とでも相互にコミュニケーションが取れて、経済活動ができます。
たとえば空間内の街や風景をユーザー自身で構築したり、イベントを主催・参加したりなどです。
そうした世界を自由に探索も可能で、目的もユーザーごとにさまざまです。
当然ながらビジネスの分野でも、多様な産業で広告効果などの活用が見込まれています。
また働く場所としての仮想空間として「メタバースオフィス」という取り組みも始まっています。
なお、弊社のビジネス向けメタバースサービス「おりこうブログCX」では、イベントや採用活動、住宅展示場などさまざまな用途に活用できるメタバース空間を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ以下より詳細をご覧ください。
現在のメタバース事例(国内外の事例)
・「Fortnite(フォートナイト)」 米Epic Games
バトルロイヤルゲームで空間内のユーザー同士が戦い、勝敗を競うゲームです。
ユーザー数は世界で4億人を超えるとされるキラーコンテンツです。
近年ではミュージシャンとのコラボなどで、空間内でのバーチャルライブを開催しています。
・「あつまれ どうぶつの森」 任天堂
日本での代表的なメタバース作品がこちらです。
キャッチコピーの「何もないから、なんでもできる」はメタバースの概念に通ずるものがあります。
また旅行会社のJTBが空間内に観光地を作成して、ビジネス分野においても活用されました。
・「Horizon Worlds(ホライゾンワールド)」 米Meta
Meta社が提供しているHorizonシリーズの1つで、VR機器を装着してバーチャルな世界にアバターとして入り、他ユーザーとゲームやライブ観戦を楽しむメタバース空間です。
「Horizon Workrooms」では、バーチャル会議やイベント開催などビジネスに活用できる要素も盛り込まれています。
しかしまだ日本では未稼働で、現状はVR機器が必須となっています。
・「バーチャル渋谷」 KDDI
現実の空間を再現するものでは「バーチャル渋谷」が登場しました。
KDDIらが取り組む渋谷スクランブル交差点エリアを再現したメタバースでは、イベントが数回にわたり開催され、のべ55万人が参加したと発表されています。
・「REV WORLDS(レヴワールズ)」 三越伊勢丹
小売産業では、伊勢丹新宿本店とその周辺をバーチャル都市とした「REV WORLDS(レヴワールズ)」のリリースがありました。
CG化された化粧品などが並んでおり、商品にはECサイトのリンクが掲載されているため、すぐに購入ができるシステムです。
メタバースはセカンドライフの二の舞になるのか?
先述した、ゲーム産業とメタバースとの親和性は高いといわれています。
ゲームがメタバース化されているとも言えるでしょう。
一方で、ゲーム以外の分野におけるメタバースの今後については賛否両論があります。国内で懸念する声として、以下の3点が挙がります。
・VR機器が普及するか?
パソコンやスマートフォンでも体験できるメタバースはありますが、メタバースへの没入感を最大限味わうには、VR機器は必須です。
今後はゲーム以外でもキラーコンテンツが現れないと、VR機器の更なる普及は難しいとされています。
・ゲームのみという印象が強い
先述のとおり、「メタバース」=「ゲーム」といった印象の人がまだ大多数です。
「そもそもゲームに興味のない層はターゲットになりえない」との見解です。
・話題作りが先行している
メタバースを実用的な技術としてではなく、「単に物珍しさでユーザーを引き付けているだけ」という意見です。
つまり、「メタバースとは一過性のものだ」との考えです。
こういった課題もありますが、メタバースの利便性がさまざまな分野に浸透・定着すれば、メタバースの世界は認められ日常化していくでしょう。
セカンドライフとメタバースの異なる点
・セカンドライフとメタバースの比較表
項目 | セカンドライフ | メタバース |
流行時期 | 2006年 | 2021年 |
対応デバイス | Windowsパソコンのみ | VR機器やスマホなど複数対応 |
アバターでのコミュニケーション | 〇 | 〇 |
仮想空間内でのイベントへ参加 | 〇 | 〇 |
仮想世界のユーザーによる構築 | 〇 | 〇 |
ユーザー同士の土地やモノの売買 | 〇 | 〇 |
国内外の大手企業の参入 | 〇 | 〇 |
上記の表のとおり、現在のメタバースと当時のセカンドライフは「できること」はほぼ同じです。
要するに、「コンセプトはほぼ同じもの」といえるでしょう。では何が違ったのか、時代背景を交えながら解説します。
・流行時期
まず大きな相違点は、セカンドライフとメタバースの流行時期が約15年違うことです。
2007年に流行したセカンドライフは、上述したとおりわずか1年ほどで衰退しました。
まだメタバースの概念が存在せず、そもそもインターネットへ触れる機会が少ない時代でもありました。
現在の国内のインターネット利用者数は2007年当時と比べて、大きく増加しています。
このようにターゲットとなりうる分母の数には、大きな違いがあります。
・時代背景
次に時代背景は、withコロナにおいて生じた社会の構造転換(デジタル化、非接触化、合理化)により、本来は数十年かけて訪れる変化が短縮されました。
この変化は、メタバースの技術にも変革を与え、追い風となっています。
またゲーム産業もメタバース化してきており、メタバースの概念が広く浸透してきています。
現在ではインターネットの世界に慣れている人がほとんどなので、ユーザーリテラシーの向上も挙げられるでしょう。
・スマートフォンやVR機器の普及
2007年当時は、アメリカで初代iPhoneが発表されたばかりで、国内ではガラケーが主流の時代です。
しかし現在国内では、スマートフォン普及率が8割を超えています。
当時はスマートフォンはまったく普及していないので、この点も大きな相違点です。
VR機器の登場については、代表的なもので2020年にMeta社がMeta Quest2というVR機器を販売しました。
一体型なので、PCやスマートフォンとケーブルで繋いだりすることなく、ヘッドマウントディスプレイ単独だけで動作します。
価格においてもMeta Quest2は「ハードウエア単体だけでは赤字で、ソフト販売で利益を出す事業モデルなのかもしれない」といわれるほど安価で、広く普及を目指したいMeta社の意志を感じます。
・端末や通信インフラの技術向上
15年という月日で最も進歩したのが、端末や通信インフラの技術の向上です。
当時は技術的課題からセカンドライフなどのオンラインサービスは同時接続数も限界があり、通信回線もようやく光回線が普及を始めたころです。
携帯電話の電波はまだ3Gでした。
3DCGを遅延なく表現するには高スペックな端末が必要で、通信速度もより速い回線が必要です。
現在は端末のスペック向上と光回線も広く普及し、5G通信もはじまりました。
より高度でリアルな描写でも遅延なく表現が可能となりました。
この技術革新により、当時は実現不可能であった現実に近い映像や音声を届けられるといった、情報の再現性の高さも違いのひとつです。
またスマートフォンだけでも体験できるメタバースも登場しており、利用のハードルも下がってきています。
・新しく誕生した技術
1.ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、デジタル情報を連鎖的に記録・管理する技術です。ブロックチェーンは不正な改ざんを防げる、信頼性の高い分散型のデータベースとなっています。
仮に誰かのデータが改ざんされても、他のユーザーが持っている分散された正しいデータで自動的に修正されます。
またデータを分散化して保持するため、システムダウンする可能性が極めて低いことも特徴のひとつです。
主な用途としては、暗号通貨(ビットコインなど)での取引などが挙げられます。
2.仮想通貨
仮想的な通貨(リンデンドル)はセカンドライフでも存在しました。リンデンドルは、仮想商品の購入や販売に利用されています。
一方、現在の一般的な仮想通貨とは、ブロックチェーン技術によって分散管理されたデジタル通貨であり、実際の商品やサービスの支払いも可能です。
また取引履歴が公開され、分散管理されているため、透明性とセキュリティの高さが特徴です。
3.NFT
NFTは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、ブロックチェーン技術を用いて、独自の識別子と所有者情報を持ち、同一性が保証されます。
つまり、あるNFTは他のNFTと代替ができず、独自の価値を持っていて、主にデジタルアートなどのデジタルコンテンツの所有権を示すために使われています。
NFT市場は急速に発展しており、高額で取引される商品も登場しています。
メタバースの未来
セカンドライフとメタバースの違いはいかがでしたか?
両者のコンセプトこそ同じですが、セカンドライフが深く浸透しなかった理由には、当時の技術や概念の課題がありました。
しかしながら現在は、ようやく時代がメタバースの実現に追いついてきたような印象を受けます。
メタバースは、新たな仮想空間技術やブロックチェーン技術の進歩により、今後ますます普及していくことが予想されます。
これまでのオンライン空間では実現できなかった、よりリアルな体験や交流が可能となり、ビジネスやエンターテインメント分野での活用が期待されています。
またNFTなどの新技術との組み合わせにより、新たなビジネスモデルが生まれる可能性も否定できません。
メタバースはまだまだ未成熟な市場ですが、日本からもメタバース市場を牽引するようなグローバルな存在が誕生する可能性をも秘めています。
メタバース時代とは「バーチャル空間に新しいインターネットがもう一回生まれる」と言われており、世界中の人々がアバターを持ち、メタバース空間で交流する未来が訪れるかもしれません。
今後メタバースは大企業のみではなく、中小企業にも広くビジネス展開が期待されています。
複数人による参加型である特徴を活かして、たとえばバーチャル住宅展示場やお客様への体験型ビジネス、企業の人材採用にも効果的です。
導入している企業もまだ少ないため、競合他社との差別化も図れます。
以上を踏まえて、ぜひメタバースのビジネス導入もご検討ください。
メタバースをビジネスで活用するなら、おりこうブログCX
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この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。