XR(クロスリアリティ)とは? VR・AR・MRとの違いを解説
更新日:2024.07.05
近年よく目にする機会が増えたXR(クロスリアリティ)。
「そもそもXRとは何なのか、意味を簡潔に知りたい」と思っている方や「ARやVRはなんとなくわかるけど、XRも似たようなものかな?」などの疑問をお持ちの方のために、それぞれの違いについて、事例を交えて解説します。
またビジネス分野におけるXRの市場規模や、今後の展望についても紹介しますので、自社のビジネスでXRを活用したい方は、ぜひご覧ください。
目次
XR(クロスリアリティ)とは?
XRとは「Extended Reality/Cross Reality」の略称で、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、現実では知覚できない新たな体験を創造する技術です。
「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの先端技術はいずれもXRに含まれており、それらの包括的な総称となります。
近年では画像処理技術の発展にともない、VRやARなどは技術の境界があいまいになってきています。
そうした背景から、XRという包括的な表現が誕生しました。
XRが注目されている背景
XRは物理的に存在しないものを、現実世界で知覚できる技術のため、多岐にわたり活用が見込め、あらゆる産業分野において拡大・普及すると予想されています。
またXR技術の普及を後押ししている背景は、主に3つあります。
- ソフトウェア技術やデバイスの次世代化
現在は映像や音響の技術が進歩して、現実空間と遜色ない仮想空間を表現できるようになりました。そういった情報再現性の向上がXRが注目されている要因のひとつです。前世代でも仮想空間は作り出せましたが、低画質でネット回線の遅延もあり、満足のいく体験は得られませんでした。
またデバイスの高性能化が進み、パソコンに接続せずとも単独で起動できる、スタンドアローン型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)やVRゴーグルが誕生しました。
スマートフォンを差し込むタイプの安価なHMDも登場し、XRの普及に拍車をかけています。 - 通信インフラの高速・大容量化
光回線の技術の進歩によりWi-Fi環境での回線速度の高速化が実現しました。
モバイル端末でも従来の4G通信では、大容量のデータ通信はできず高解像な映像をリアルタイムでは表現できませんでした。
5G通信の登場により、この課題もクリアして高い臨場感を体感できるようになりました。 - 新たなコミュニケーションの定着
新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会の構造転換が必要とされました。デジタル化・非接触化・合理化を図るツールや技術の活用が、オンライン環境での新たなコミュニケーションとして広く浸透しました。
これらの変革はXR分野の技術面にも大きな影響を与え、成長を促す結果となったのです。
XRを体験するデバイスはHMDのほかに、パソコンやスマートフォン、スマートグラスが主な対応デバイスです。
なかでもHMDは、目に映るすべてが仮想空間内となるため、没入感が高く、よりリアルな体験を与えます。
各デバイスともに現在では誕生当初と比べると安価になりましたが、今後はよりデバイスの小型化・高性能化・低価格化が進むとされています。
なかでもHMDは、目に映るすべてが仮想空間内となるため、没入感が高く、よりリアルな体験を与えます。
各デバイスともに現在では誕生当初と比べると安価になりましたが、今後はよりデバイスの小型化・高性能化・低価格化が進むとされています。
VR(仮想現実)とは?
VRとは「Virtual Reality」の略称で、人工的に作り出された仮想空間を体験する技術を指します。
仮想現実とも呼ばれます。
一般的に、HMDやVRゴーグルなどのデバイスを使用して、視覚的・聴覚的・触覚的な情報を360度の仮想空間内でリアルタイムに提供し、ユーザーにまるで現実にいるかのような感覚を与えます。
2016年からVRを活用したコンテンツは徐々に身近なものになっており、HMDとコントローラーを使って遊ぶというコンセプト自体は成熟したものと言えるでしょう。
主にゲームなどのエンターテインメント分野においての活用が活発です。
VRの主な要素は、以下の3つとなります。
- HMD (ヘッドマウントディスプレイ)・VRゴーグル
VRの中心となるデバイスで、頭に装着して眼前に仮想空間を表示するディスプレイです。HMDは、2つの小さなディスプレイを装備し、それぞれの画像を左右に分けて表示します。
またヘッドトラッキングという技術を使用して、ユーザーの頭の動きに合わせて、仮想現実内の視界も同時に動くようになっています。
- コントローラー
VR空間の中で自由自在に操作するためのコントローラーです。
コントローラーを用いて、仮想空間内でオブジェクトを移動させたり、操作したりすることができます。
- センサー
VRを利用する際には、ユーザーの位置情報を把握するセンサーが必要です。
センサーは、HMDとコントローラーの位置を検知し、仮想空間に正確に位置を反映します。
なお、弊社のビジネス向けメタバースサービス「おりこうブログCX」でも、VRを活用して没入感を体験できるメタバース空間を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ以下より詳細をご覧ください。
VRの具体的な事例
VR内覧(リコー『THETA 360.biz』)
株式会社リコーが提供する「THETA 360.biz」は、360°コンテンツの制作・公開ツールです。
無料で使える専用アプリをリモコン代わりに、住宅の室内をTHETAで撮影したらすぐにスマートフォンに転送され、その場で360°見渡せる室内画像の確認ができます。
Googleストリートビューのようにマップ上に360°画像をプロットして連動させることや、360°画像を擬似的につなげて移動するように見せることも可能です。
その後、画像をクラウドにアップし発行されたURLを自社のホームページなどに埋め込むことができ、SNSなどにも使用できるので幅広い活用が見込めます。
公式サイト:【リコー公式】THETA 360.biz
AR(拡張現実)とは?
ARとは「Augmented Reality」の略称で、現実の世界に対して情報を追加したり、補完したりする技術を指します。
拡張現実とも呼ばれます。
スマートフォンやタブレットなどのデバイスを使用して、カメラで撮影している現実の映像に、立体的なデジタル映像などの情報を重ねることで、現実の世界を拡張させて表現できます。
視界すべてが仮想空間になるVRと違い、現実世界の映像の上に仮想世界の情報が重なっているイメージです。
スマートフォン単体で体験できるという気軽さからユーザー層も広く、XRのなかでは現在もっとも定着している技術といえるでしょう。
ARは、スマートフォンのアプリケーションや映像加工などの分野で活用されています。
身近なものでは、現実の風景上にCGのキャラクターが登場するゲームアプリ「ポケモンGO」や、顔にCGを重ねて加工するアプリ「SNOW」などは使ったことがある方も多いのではないでしょうか。
ARの具体的な事例
AR設置(『RoomCo AR』)
「インテリアを試着する」というコンセプトの「RoomCo AR」というアプリがリリースされました。
インテリア家具のAR設置アプリで、部屋の中の映像に商品の設置イメージを重ねて事前に確認ができます。
家具はサイズを誤ると、買っても置くべき場所に収まらずに悩む人も多いでしょう。
「RoomCo AR」では設置イメージをアプリで確認できるので、部屋の構造に最適なサイズの家具を自宅にいながら手軽に検討できます。
公式サイト:RoomCo AR
MR(複合現実)とは?
MRとは、「Mixed Reality」の略称で、現実世界と仮想空間を融合させた技術を指します。
複合現実とも呼ばれます。
MRでは、現実世界と仮想空間が連携し、現実の物体を操作したり、仮想空間で作成した物体を現実の世界に反映させたりすることが可能です。
MRは、ARと類似していますが、ARは基本的には決まった角度からの映像でしか対象を視認できません。
一方でMRは、スマートグラスやヘッドセットを使用して、360°全方位から対象のCGオブジェクトを視認できます。
また現実に投影されたCGに対して直接干渉ができるのも、ARとは異なるポイントです。
くわえてMRは、複数人で同時体験することもできます。
離れた場所にいる人をその場に投影して一緒にいるかのように会議したり、製品の設計図をホログラムで表示して全員でイメージを共有したりと、未来的なビジネスシーンも実現してしまうのです。
代表的なMRデバイスとして、米マイクロソフト社の「HoloLens 2(ホロレンズ2)」が挙げられます。
半透明であるゴーグルを通して、周囲の現実世界を見ながらゴーグルに投影されたCG情報を自らの手で操作できるシステムです。
MRは製造業や建築業、医療やエンターテインメントなどの分野において活用が盛んです。現実世界に近い感覚を体験できるため、より実用的で効果的なサービスや活用方法を生み出すことが期待されています。
MRの具体的な事例
MRマニュアル(トヨタ自動車)
自動車製造のトヨタ自動車は販売店の整備士に対し、革新的なトレーニングや整備作業のサポートおよび最新の視覚化機能を目的として、MR技術の導入に至りました。
現場の整備士にとって、マニュアルは車種ごとにあるため数が多く、2Dのイラストでは内部の構造などがわかりにくい、といった課題の解決も導入の要因です。
整備士はホロレンズを装着することで、バーチャルマニュアルを車に直接重ね合わせて3Dで手順を確認しながら作業ができるようになりました。
MR技術の活用はトヨタが「新人や未経験の整備士でも短期間で質の高い作業が可能」という見解を示すほど、効果的だったようです。
MRは、人手不足や後継者不足に悩む技術職や伝統産業の現場での活用にも期待されています。熟練者の技術をMRでわかりやすく表示することで、技術継承のサポートにも有効です。
XRの市場規模
リサーチ会社のIDC Japan株式会社は、世界のAR/VRのハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスの市場予測を発表しました。
公式発表によると、世界のAR/VR関連支出は2022年に138億ドル(約1.8兆円)に達し、2026年には509億ドル(約6.9兆円)に増加すると推計しています。
このうち、消費者向けと法人向けの比率はほぼ均等ですが、VR関連が全支出の70%以上を占めるとの予測です。
また、世界支出500億ドルのうち、過半数は米国と中国とされています。
今後の成長予測の地域別では、米国と日本を除くアジア太平洋地域での成長期待が高いとのことです。
日本では主に、製造分野での成長が期待されています。
XRの分野ごとの活用事例
- エンターテインメント
仮想現実の世界で映画や音楽などのコンテンツを体験できます。また、XRを用いたアトラクションやゲームも開発されています。
HMDを使用するVRゲームではカプコン社の「バイオハザード7 レジデント イービル」などが代表的な例です。
- 教育
仮想現実の世界で歴史や科学などの授業をリアルな体感をともなって実施できます。トレーニングプログラムも開発されており、医療やスポーツ分野で活用されています。日本では教育分野でのXR市場の成長が今後の課題です。
- ビジネス
遠隔地にいる人を投影して、対面しているかのようなバーチャル会議を実施できます。訓練やシミュレーションのためのサービスも開発されており、製造業や建築業などの分野で活用されています。
- 観光
仮想現実の世界で、バーチャル観光地への旅行や観光を体験します。観光客向けのガイドや案内も開発されており、観光業界で活用されています。一例として、沖縄県の取り組みである「バーチャル沖縄」が挙げられます。
- 医療
患者の状態を仮想的に確認できます。また手術のトレーニングや手術中に支援するソリューションも開発されており、医療分野で活用されています。
- 製造業
製造現場において、MRを用いて、従来よりも正確で迅速な製造プロセスが実現します。たとえば、現実のオブジェクトに仮想の部品を追加したり、現実の環境に仮想的な工具を置いたりして、製造工程のシミュレーションに役立ちます。
- 建築業
建築現場において、MRを用いれば、建物の設計やレイアウトのより正確な把握が可能です。また建物内部のデザインや装飾を、3D空間で仮想的にレンダリングすることもできます。
「東急建設株式会社」の実例を紹介します。施工を実施する構造物の3DモデルをVR空間に作成し、関係者同士が同じイメージを共有するというプロジェクトです。
今後のXR
ハードウェアやソフトウェアの進歩により、より高画質で滑らかなXR体験が可能になると予想されます。
さらに、AI技術との組み合わせによって、より高度なXR体験が実現することも期待されています。
XR技術において、今後期待される点は以下の5点です。
- デバイスの高性能化
ハードウェアの進歩により、さらなる高画質・高速化が目指されています。またAI技術の進化により、より自然で滑らかな仮想空間の創造が可能になると予想されます。
- 通信インフラの高速化
5Gの普及によって、より高速でリアルタイムなXR体験が可能になると予想されます。
高速通信のもと、より円滑な相互コミュニケーションや、遠隔での共同作業に遅延を発生させず利用できると見込まれています。
また更なる高速化を目指すため、第6世代通信システムである6Gの開発も開始されました。
- スマートグラス
現在はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のような形態が主流ですが、より軽量でスマートなグラス型のXRデバイスが普及すると予想されます。
スマートグラスはユーザーに、スムーズで自然な仮想現実体験を提供できます。
- XR活用の拡大
XR技術はすでに、エンターテインメントやビジネスなどで活用されていますが、今後は医療分野や教育分野など、より幅広い分野に浸透・定着が予想されます。
- XRエコシステムの構築
XRエコシステムの構築が進み、さまざまな企業が協業して、より高度で使いやすいXR技術を提供することが期待されています。
XRの活用は企業にとって今後必須になっていく
業務の効率化やユーザーの利便性向上に大きく寄与しているXRの技術は、今後も更なる発展が期待されています。
今まで常識とされていた概念も、XRの実現により変わりつつあります。
日進月歩で進化を続けるデジタル技術により、現実世界と仮想世界の境界はなくなっていき、私たちの生活においてXR技術は、なくてはならないものになっていくでしょう。
とくにビジネス面においては、事業の今後の方向性にも大きく影響を与えることが予想されます。
大手企業だけでなく、中小企業においても早期にXR技術を有効に活用して、ビジネスに取り入れることが重要です。
複数人で参加できる特徴などを活かして、たとえばVR展示場やARを利用したお客様への商品提案などは、多様な分野で効果が見込めます。また先進技術の利用は、企業の人材採用においても求職者への訴求ポイントとなりえます。
導入している企業もまだ少ないため、競合他社との差別化につながるでしょう。
以上を踏まえて、ぜひXR体験を可能にするソリューション「おりこうブログCX」のビジネス導入もご検討ください。
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一足先にメタバース空間による未来のXRビジネスモデルを取り入れて、競合他社との差別化を図りませんか。
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この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。