『いちばんやさしい資料作成&プレゼンの教本 人気講師が教える「人の心をつかむプレゼン」のすべて』企業ホームページ運営参考書籍レビュー
更新日:2024.07.24
PowerPoint(パワーポイント)に関する本・書籍をご紹介。今回は『いちばんやさしい資料作成&プレゼンの教本 人気講師が教える「人の心をつかむプレゼン」のすべて』(著:高橋恵一郎)の読みどころやポイントを紹介します。
プレゼンテーション・プロデューサーとして活躍している、PRESENTATION PLANNING代表の高橋恵一郎さんによる「プレゼンのすべてを体系的に網羅した書籍」です。
プレゼンテーションの基礎を、理路整然と要点をわかりやすく解説しています。
再現性の高いルールだけで構成されているため、どんなジャンルのプレゼンテーションにおいても参考になる内容となっています。
プレゼンテーションの基礎を、理路整然と要点をわかりやすく解説しています。
再現性の高いルールだけで構成されているため、どんなジャンルのプレゼンテーションにおいても参考になる内容となっています。
【特に重要なポイント・内容】
- そもそもプレゼンテーションとは何か
プレゼンとは「自分の考えやアイデアを伝えて、聞き手に変化を求める行為」と定義する。
プレゼンを使うのは、ビジネスシーンだけではない。プライベートで旅行の行き先について友人を説得する行為や、子どもが親にオモチャをねだる行為もプレゼンといえる。
- 話し手が主役ではなく、聞き手が主役のプレゼンを意識する
専門用語だらけや難解な説明が続くプレゼンでは、話し手本位になってしまう。
聞き手が主役のプレゼンポイント
・聞き手にとっての価値を提供する
・聞き手にあったペースで話す
・視線は聞き手をメインにして、聞き手を意識した話し方
・聞き手でも理解できるわかりやすい言葉を使う
・プレゼン資料は、聞き手が理解しやすいデザイン
・聞き手に伝わりやすくすることを目的としたアニメーションを使う
- プレゼンを成功させるには機能の説明だけでなく、価値を提供する
機能によって得られる価値も伝えることで、行動を起こすきっかけを作る。単なる機能説明となってしまっているプレゼンでは、聞き手の心は動かない。
- 聞き手には潜在的価値を伝える
とくにプレゼンされなくても、聞き手自身が気付ける価値を顕在的価値という。
話し手によって気付かされる価値を、潜在的価値という。
文房具の4色ボールペンを例にすると、下表のような価値に分かれる。機能顕在的価値潜在的価値概要 商品が持つ機能 聞き手にとっての価値 聞き手にとっての価値 聞き手が得るもの 商品に対する知識 想定通りの満足 想定以上の満足 4色ボールペンの事例 摩擦率の軽減バランスの向上カバンがかさばらない何時間でも疲れない思考力アップ姿勢が改善
プレゼンでは、潜在的価値を伝える。ただし、潜在的価値は人によって異なる。プレゼンする相手が、どんなことに価値を見出すのかを明確にする。
- 事前に聞き手に響く潜在的価値を調べる準備を行う
潜在的価値のリサーチをしないでプレゼンするのは、的が見えない状態で矢を射るのと同じこと。 - プレゼンを構成する3要素
1.「内容力」
・聞き手にとっての価値の大きさ
・構成のわかりやすさ
2.「人間力」
・性格や人柄
・肩書や社会的地位
3.「伝達力」
・プレゼン資料のわかりやすさ
・プレゼン技術のわかりやすさ - 聞き手の心理プロセス
「信用」→「理解」→「納得」→「共感」→「決断」の5つのステップで構成される。このプロセスは、1つずつ順番にクリアしていく必要がある。聞き手の自分事にならなければ、共感・決断はできない。
- プレゼンの正しい準備の仕方
1.「内容設計」
聞き手のとっての価値を考え、聞き手に伝わりやすい構成で組み立てる。
2.「資料作成」
ここではじめてPowerPointを開く。しっかり内容設計してから資料作成に臨む。
3.「実践練習」
練習を繰り返すことで、資料に磨きがかかりプレゼンに対しての自信がつく。 - プレゼンをつくるときは、まず「ゴール」を決める
ゴールとは「自社サービスを知ってもらうこと」なのか、「自社サービスを購入してもらうこと」なのかなど。
6W2Hでゴールをイメージする。
「What」「Who」「Why」(何を、誰に、なぜ)の3つは必ず明確にすること。
「When」「Where」「Whom」「How」「How much」(いつ、どこで、誰に向けて、どのように、いくらで)の5つは必要に応じて考える。
- 伝わるプレゼンに欠かせない「流れ」をつくるために「型」を使う
・ホールパート法
「要点」→「詳細A」→「詳細B」→「詳細C」→「要点」
・プレップ法
「要点」→「理由」→「具体例」→「要点」
どちらの型にも共通している「要点・結論」を最初に伝えること。最初に着地点を知らせてから具体的な詳細を話せば、聞き手は落ち着いてプレゼンを聞ける。
ホールパート法をベースに改善した「プレゼンの基本型」
「導入」→「要点」→「詳細の前振り」→「詳細」→「詳細の振り返り」→「要点」→「具体案」
最後に「具体案」があるか否かで、聞き手を行動に促せる確率が大きく変わる。
- プレゼンの最初の要素である「導入」では、プレゼンの背景を聞き手と共有する
導入のつくり方は「プレゼンターの自己紹介」、「周辺の話題」、「プレゼンの目的や理由」などを組み合わせる。導入がスムーズだと、本題も落ち着いてプレゼンできる。
社内の同僚や、普段から取引のあるお客様などの場合、導入は不要である。
- 聞き手にとっての価値を「要点」で示す
要点では「自分が伝えたいこと」だけでなく、「聞き手にとっての価値」を必ず組み込む。
「聞き手の価値」の確認方法
「このプレゼンを聞いていただくことで、あなた(聞き手)は〇〇できるようになります。」という一文を書き出す。文中の〇〇の部分を書ける場合は、聞き手にとっての価値を明確にできている。
- 「前振り」で聞き手に聞く準備を促す
具体的には、これから話す内容の「数量」と「概要」を示す。
前振りの表現を揃えると、プレゼンが聞きやすい。
1.最新の業界動向について→ 1.最新の業界動向
2.弊社新サービスのご紹介→ 2.弊社の新サービス
3.今後のスケジュール → 3.今後のスケジュール - 論理と物語で、納得・共感する「詳細」をつくる
プレゼンの中核である「詳細」構造は、「要素分解」・「時系列」・「対象概念」の3つのフレームワークを意識する。
「要素分解」、「時系列」のどちらもそれぞれの要素のモレ・ダブりなく、レベル感が一致していること。
「人・物・金・商品」
この例では、「商品」は他の要素と比べてレベル感が異なる。
「過去・現在・明日・未来」
この例では「明日」は、他の要素と比べてレベル感が異なる。
「対象概念」では、お互いに対照的な要素の際に用いる。
たとえば「質と量」や「効率と効果」など。 - フレームワークを決めたら、具体的な内容をつくるための4ステップで構成する
内容をつくるときは下図のように、付箋を使うと自由に並び替えができる
発散:アイデアを全て書き出す
集約:アイデアを俯瞰してグループ分けする
要約:グループ化した情報をひと言で表現する
選択:聞き手にとっての重要度・優先度や、モレ・ダブリがなくレベル感が一致しているか確認する
集約:アイデアを俯瞰してグループ分けする
要約:グループ化した情報をひと言で表現する
選択:聞き手にとっての重要度・優先度や、モレ・ダブリがなくレベル感が一致しているか確認する
「論理」で納得させ「物語」で共感させる。論理は頭に響き、物語は心に響く。
- 「詳細」部分を伝え終えたら、「振り返り」として聞き手の理解を促す目的で「前振り」と同じく「数量」と「概要」を示す
例:「以上、AとBとCの3点についてお話ししました。」
- 大切なこと「要点」は2回伝える
要点はプレゼンの中で最も大切なポイントなので「振り返り」に続いて、もう一度「要点」を伝える。内容は冒頭の要点と同じで構わない。 - プレゼンの最後の「具体案」では、聞き手のレベルに合わせてハードルを低くする
×「ぜひ海外旅行に行ってみてください。」
〇「まずは海外旅行のブログをのぞきに来てください。」 - プレゼンに「インパクト」を与えて、聞き手の記憶に残るものにする
インパクトには「数字」、「演出」、「物語」の3種類がある。インパクトは、プレゼンの成功率を大きく変化させるため、積極的に取り入れる。
- プレゼンの中身とプレゼンのデザインは、どちらもプレゼンの中核を成す
ただ羅列された情報や散らかったデザインではなく、整理された情報や整ったデザインにすること。聞き手に負担をかけないデザインを意識する。 - プレゼンで使われるツールは「プレゼン資料」、「配布資料」、「メモ」の3つとなる
「プレゼン資料」と「配布資料」は役割が異なる。
プレゼン資料は「聞き手のための視覚的な補助ツール」である。聞き手が3秒以内に読める量に絞り、絞れない場合は、アニメーションなどを使って分割する。
配布資料は「聞き手のための復習ツール」である。プレゼン資料に記載できなかった情報や、それほど重要でないけれど、ぜひ伝えておきたい情報など、すべての情報を網羅する。
フォントサイズは、下表のように3種類程度にまとめる。プレゼン資料 配布資料 フォントサイズ 大 48pt 24pt 中 36pt 18pt 小 24pt 12pt
- プレゼン資料を構成する6つの要素
プレゼン資料は、主に「文字」・「図形」・「グラフ」・「画像」・「配置」・「色」という要素で構成されている。
- 「文字」には大別すると「可視性」に優れるゴシック体、「可読性」に優れる明朝体がある
オススメのフォントは「メイリオ」で、英文は「Segoe UI」の2つ。「メイリオ」は文字が大きく表現されて見やすいフォントで、「Segoe UI」は純粋に美しいフォントである。
役割に応じて、文字に大きさや色で強弱をつける
「スライドタイトル」・「メインタイトル」・「サブタイトル」・「本文」という主な4つの役割ごとに強弱をつける。
行間を調整して聞き手の負担を減らす
行の長さが長くなればなるほど、行間が空いていないと読みづらくなる。行間を広めに(文字サイズの1.2~1.3倍)に調整する。 - 「図形」は派手なオブジェクトは使わず、シンプルなオブジェクトを使う
余計な装飾は不要で、囲み文字は塗りつぶしだけ、あるいは枠線だけにする。 矢印はシンプルに、円は真円にする。小さな印象の違いの積み重ねが、資料全体として大きな差を生む。 - 「グラフ」は事実ではなく主張を表現する
グラフはシンプルな2Dグラフを使う。凡例はグラフ外ではなく、グラフ内に入れると目線が行ったり来たりしなくて済む。
話し手が何も言わなくても伝わる「ひと目で主張がわかるグラフ」を意識する。重要でない情報はグレーアウトし、伝えたい情報だけを色付けする。
- 「画像」は資料にインパクトを付加する
トリミングなどで余計な部分をカットしたり、伝えたい部分だけを裁ち落とししたりして、インパクトを与える。複数の画像を同一ページに並べる場合は、画像のサイズや形を揃えて整列させる。 - 「配置」は資料の読みやすさを決める
配置の3原則である「余白」、「関係性」、「整列」を意識した資料にする。 - 「色」は数を絞って(4色まで)アクセントカラーを際立たせる
色が多すぎると聞き手が混乱する。文字や背景を黒や白とするなら、使える色は2色となる。 - プレゼン技術は「印象マネジメント」、「伝達ワード」、「発表ツール」の3つに分けられる
「印象マネジメント」は、話し方やジェスチャーなどを意識して、印象をマネジメントする技術。
「伝達ワード」は伝わるプレゼンに欠かせない「言葉」のテクニック。
「発表ツール」は、使いこなすと聞き手への伝わり方が変わるPowerPointツール。 - 印象には「コンピタンス=信頼感」と「ライカビリティ=好感度」の2軸がある
両者はシーソーのような関係で、一方を上げれば他方が下がる。状況に応じてコントロールする。 - 5つの伝達ワード「つなぐ」、「繰り返す」、「呼びかける」、「問いかける」、「寄り添う」は伝わり方を大きく変える。
「つなぐ」言葉をスライド間に挟めば、聞き手はつながりを感じる。
「繰り返す」では大切なことは何回も繰り返し伝える。
「呼びかける」言葉で聞き手が主体性を持って聞けるように巻き込む。
「問いかける」ことで聞き手の集中力を高める。
「寄り添う」言葉で聞き手と一体感を得る。
自分のプレゼンに「情熱」を持ち「能動的」にプレゼンする
話し手の受動的な気持ちは、聞き手に伝わってしまう。情熱を持って能動的に臨めば、聞き手に気持ちが伝わり成功率もアップする。
本書は初めてプレゼンテーションを行う方や、改めて基礎を学びたい方にもピッタリの入門書です。
技術的なテクニックだけでなく、心情的なテクニックも解説されており「いかに聞き手に自分事として捉えてもらうか」という点に、終始フォーカスされています。
本書を読めばプレゼンテーションだけでなく、さまざまなビジネスシーンでも活用できる知見を得られるでしょう。
この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。