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『秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも〈いいね〉がもらえるスライド作成のコツ』企業ホームページ運営参考書籍レビュー

更新日:2024.07.24
『秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも〈いいね〉がもらえるスライド作成のコツ』企業ホームページ運営参考書籍レビュー
PowerPoint(パワーポイント)に関する本・書籍をご紹介。今回は『秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも〈いいね〉がもらえるスライド作成のコツ」』(著:豊間根青地)の読みどころやポイントを紹介します。
大手飲料メーカーに勤める傍らで「パワポ芸人」としても情報発信している豊間根青地さんが、シンプルでわかりやすいスライドを作成するためのコツを解説した書籍です。

「秒で伝わる」ことを意識したスライドのデザインや構成などを、「もし桃太郎がイヌ・サル・キジにお供になってくれるようにプレゼンしたら」というユーモアある題材をもとに紹介されています。

【特に重要なポイント・内容】

  • パワーポイントはビジネスマンにとって最も身近で使いやすい「ビジュアライゼーションツール」である
 
  • スライド制作とは
    「相手に納得して行動してもらうという目的を達成するために」
    「相手に伝える必要があるメッセージを整理して」
    「適切な要素に置き換えて相手に伝える」
    という一連の流れである
 
  • メッセージを考える上で最初にすべきことは「何を伝えたら相手は納得&行動してくれるか?」を考える

  • スライド作成の全体工数としてメッセージ作成工程に7割、デザインに落とす工程に3割程度で済ますようなイメージで取り掛かる。必要以上にデザインにこだわらないこと。

  • 優れたプレゼンには下図のように三階層の「要するに」を持っている
三階層の「要するに」を持つ構造

1.メッセージを作る

いきなりパソコンを使わず、まずは紙とペンを用意して伝えるメッセージを考える。
考えるという文脈においては、紙とペンに勝る道具はない。

  • プレゼントを決める
    納得&行動という目的を達成するために、相手に伝える必要があるメッセージ(プレゼント)を考える。
    結論を先に教えることで、聴き手が判断に必要な情報を探しながらプレゼンを聴くことができる。聴き手が答え合わせをするようにプレゼンを聴けると、話が頭に入ってきやすい。

  • すべてを書き出す
    「悩む」のではなく「考える」こと。
    頭の中にある言いたいことや材料になりそうなことを、整理することなくすべて吐き出す。

  • 章を作る
    最初に全体像を示して、区切りながら説明できるような章立てにする。
    たとえば提案資料の場合は、
    結論→問題提起→解決策→安心・信頼→行動
    という章立てとする。

  • メッセージに分解する
    各章の「要するに」を説明するために、不足している情報を箇条書きで補足する。
    スライドがなくてもここで出来た箇条書きのメッセージだけで、どんなことが言いたいのか伝わるようにすることが理想。このメッセージでスライド全体の「あらすじ」が伝わらないようであれば、もう一度工程をさかのぼって箇条書きを作り直す。

2.デザインに落とす

  • 記号を選ぶ
    ビジュアルの強みを活かせる記号を使う。
    「秒で伝える」スライドを作るためには、可能な限り文字を使わずビジュアルで伝える。
    重要なポイントは「文字で表現されたメッセージを、いかに文字を使わずにビジュアルで表現するか」ということ。

  • ノイズを減らす
    メッセージを伝える上で、必要ない記号はスライド上に載せない。
    色や大きさを変えて「今見てほしい部分」を際立たせ、ノイズとなる他情報と差別化する。
  • スライドデザインの5ステップ
1. 構造を抽出する
「箇条書きで作ったメッセージの中にどんな構造が含まれているか」を理解して構造化する。
数字を持ったメッセージには図解とグラフを使いこなす。

図解:位置関係・流れ・大きさの要素によってメッセージを示す
グラフ:基本的には図解と同じ3要素によって考える。「量は棒グラフ、率は折れ線グラフ」が基本的な作法
2. スライドのアウトラインを作る
このステップでは「それさえ見れば思考停止でスライドが作れるような紙の設計図を作る」こと。
スライドにはメッセージが先、それを説明するのが図解・グラフ」という主従関係を常に意識する。

Zの法則(読み手が文章などをおおまかに確認するときの視線の動き)でアウトラインの設計図を作る。
「見せる」スライドとするか「読ませる」スライドとするかで情報量を変えること。

紙にペンでスライドに見立てた四角形を描いてアウトラインを作る。アウトラインはあくまでメモ書きなので、美しく書く必要はない。
ここまでの工程で紙とペンの役割が終わる。

3. スライドに清書する
このステップではじめてパワーポイントを立ち上げる。
作成したアウトラインに沿って、メッセージを書き入れてから図解やグラフを差し込んでいく。細かい調整や装飾は行わず「文字をビジュアルで語り切る」ことを意識する。
4. ノイズを減らす
  • メッセージを削る
    1スライド1メッセージ、つまり「要するに」でまとめられる内容にする。

  • 色を削る
    コンセプトカラーを決めたら、そのコンセプトカラーの明度だけを調整してサブカラーを作る。
    あとは、濃いグレー・グレー・薄いグレーの3色と合わせた計5色で見てほしいところに色をつかい、後はグレーにする。図解やグラフは重要な要素のみを色付けすると、素早く理解できる。

  • 線を削る
    線を付ける理由がないなら消していく。
    図形は基本的に「塗るだけ」「線だけ」のどちらかにする。

  • 文字を削る
    スライドの上に書く文字は「読ませる」つもりで書かず、「見せる」つもりで書く。
    いちいち頭を使って咀嚼しなくても、一瞬で脳に刺さるような文字が理想。
    スリムな言葉に削るには、具体的に下記のような点に着目してそぎ落とす。
    • 修飾表現をやめる
    • 「~という」はやめる
    • 冗長な部分はシンプルに
    • 重複をやめる
    • なくても通じるは削る
    • 文脈でわかるものは削る

  • 文字や図形の位置を揃える
    「神は細部に宿る」という考えのもと、ほんの小さな細かいところにも徹底的にこだわって作る。

  • ルールを揃える
    「タイトルは32ptにする」
    「左側にメリット、右側にデメリットを書く」
    「アイコンは白黒のシンプルなものを使う」など

  • フォントを揃える
    Windowsなら「游ゴシック」または「メイリオ」、Macなら「ヒラギノ角ゴシック」がおすすめ。

  • 間隔を空ける
    関係が強いもの同士は近く、弱いもの同士は遠くする。
    余白は、様々な要素を配置した“結果として生まれるもの”ではなく、ひとつの要素として“意図的に作るもの”である。
5. ちょろっと飾る
理由を持って適切に飾れば、メッセージをより魅力的にする。

アイコン:物事の特徴を抽出してシンプルに示した絵
イラスト:アイコンよりは写実的だが、写真よりはデフォルメされている絵
写真:物事の様子をそのまま画像にしたもの

文字だけだと目が留まりにくいメッセージのアイキャッチとして用いる。
しかし、なぜそこにその飾りが必要なのかという問いに答えられるようにしておくことが重要。

3.プレゼンする

  • 「物語」を語る
    相手の頭の中にイメージをうまく組み立ててもらうように意識して、プレゼンを進行する。
    章が変わるときには、つながりを持った言葉で説明する。
     
  • 地図を入れ込む
    聴き手に「自分がどこに向かうのか、今どこにいて、どこまで進んできたのか」を把握させる。
    「今日の話は要するにこういうことです」
    「今からこの部分を話します」
    「今日お話ししたのはこういうことです」

  • あらすじを押さえる
     スライドに書いてある文字をただ読むのではなく、物語の補助としてスライドを見せる。



著者が本書で語っているスライドの本質「相手に納得して行動してもらう」ための伝達力や言語化は、プレゼンテーションに限らずビジネスシーンにおいて必要とされるスキルでしょう。
 
数あるPowerPointの参考書の中でも冗長すぎず的確なポイントを押さえているので、初学者の方にオススメの1冊となっています。
 この記事を書いた人
高島 耕
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。