『「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』 企業ホームページ運営参考書籍レビュー
更新日:2025.05.28

企業ホームページの運営に関する本・書籍をご紹介。
今回は『「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』(著:細谷功)の読みどころやポイントを紹介します。
みなさんは以下のようなお悩みはないでしょうか。
- SNS上の不毛な議論から抜け出したい
- 上司と部下など、依頼主と被依頼主の関係を改善してパフォーマンスを向上させたい
- 日常のコミュニケーションギャップを解消し、ストレスを減らしたい
本書ではこのようなコミュニケーションの悩みを解決するために、「具体と抽象」を行き来する思考法を解説しています。また、「論理的に考えるのは難しそう…」と感じる方も、身近な例題を通じて自然に思考力を高められます。
実務にも活かせる思考力、コミュニケーション能力を身につけたい方はぜひご覧ください。
【特に重要なポイント・内容】
「抽象的でわからない」は本当か?
抽象という言葉は、理解できない、わかりにくいといった意味で使われ、具体という言葉は曖昧さがなくわかりやすいといった印象を持たれている。
しかし、実際には具体的であるがゆえにわかりにくいケースもある。
【具体的であるためにわかりにくい例】
具体的な発言:「本は本棚に返して、お皿は食器棚に戻して、飲み物は冷蔵庫に持っていって…」
抽象的な発言:「片づける」
このように、抽象的であれば簡単に説明できる話だが、具体的だと何度も同じ内容を話しているように感じてわかりにくい。
具体と抽象を行き来して考える
問題解決において「具体と抽象を行ったり来たりする思考回路」があると、別の問題解決にも応用できる。以下の演習問題はその例。
【演習問題】
住居に関して「持ち家か賃貸か?」という議論がよくされるが、これと同じような構図の話が住居“以外”にもないか?
この問題を具体的に考えると、建物の話・部屋の話である。
しかし、抽象的に考えると「購入して所有するのか、購入せず都度払いにするのか?」という問題だと考えられる。
→よくある「買い切り」と「サブスクリプション」のどちらがいいか、とほぼ同じ構図
そのため、サブスクリプションのメリットである
- 最新機能がすぐ使える
- メンテナンスの手間がいらない
- セキュリティ対策をしなくてもよい
といった特徴に容易に気付ける。
さらにこの考え方を応用すれば、「家具」「コンタクトレンズ」「音楽」なども、「所有か利用か」の観点でほとんど一緒だと考えられる。
具体と抽象は相対的
具体と抽象はお互いの関係性を示すもの(相対的な概念)
(例)「日本」 という言葉であれば
「東京都」 などの都道府県名と比べたら抽象的な言葉
「アジア」「ヨーロッパ」 などの地域名と比べたら具体的な言葉
また、私たちは身の回りのものや言葉を階層的に捉えている。
下の図10は「虫」の例。
トノサマバッタとオンブバッタは抽象度が上のバッタの性質を満たすとともに、バッタもクワガタもさらに抽象度が上の虫の性質を同じように満たしている。

抽象度が上がれば上がるほど一般的になり、具体性が上がれば上がるほど特殊な個別の事象になる。つまり、抽象度が高くなればなるほど言葉の汎用性が上がり、一つの言葉で表現できる対象の数も増える。
具体と抽象の性質
具体 | 抽象 |
個体 | 集合 |
特殊 | 一般 |
五感で感じられる実体 | 五感で感じられない概念 |
個別の属性(形、色、大きさ 等) | 二社以上の関係性、構造 |
抽象化とは?
- 抽象化とは複数ある事象の「共通点を抜き出し、ひとことで表現すること」
このような抽象化の方向性は一通りではない。図20であれば図形を「形」「色」の2種類の方法で抽象化している。 - 抽象化とは「線引きして、グループごとに分けること」
図21では様々な濃さの図形があるが、ある点を基準に線引きして白と黒に分けている。

何らかのルールや規則を作るときに上記のような抽象化が求められる。
例として
- 補助金、税の優遇制度では「年収○○万以上・未満」
- 走行速度では「時速○○km以上はスピード違反」
といったように線引きをする。
ここで抽象化の限界が見えてくる。
「2000万円の貯金がある年収500万円の人」も「2000万円も借金がある年収500万円 の人」も同様に扱わなくてはならない。
→抽象化には各事象の特別性を全て無視しなくてはいけないというデメリットがある。
具体化とは?
- 具体化とは、抽象的な概念を「固有名詞や数字によって行動可能なレベルに落とし込むこと」
具体化の例:
抽象:「無駄をなくそう」
→ 具体:「会議の時間を30分短縮する」「紙の資料をPDFにする」
抽象:「会議の準備をする」
→ 具体:「明日の会議で3つの提案を持ってくる」 - 具体化とは「違いを明確にすること」
ヒラメとカレイの違いは何か?
台風とハリケーンの違いは何か?
のような課題に、相違点を見つけて明確化する。
また、相違点を見つけて具体化には情報量が必要となる。
具体と抽象から考えるコミュニケーションギャップ
具体と抽象の視点、抽象度の把握能力が欠如しているとコミュニケーションギャップが発生する。
【抽象度がずれている会話の例】
A 「映画は好きですか?」
B 「あんまり見ないけど、最近見た○○は面白かったよ」
A 「じゃあ映画が好きなんですね」
B 「映画全体が好きなわけじゃなくて…」
この会話では、映画(抽象)と最近見た○○(具体的な作品)の抽象度の違いからコミュニケーションギャップが発生している。
このように会話内での言葉に抽象度の差がある場合には、その言葉の抽象度を理解して会話する必要がある。
「他人にレッテルを貼る」はなぜおこるのか
「他人は一般化して抽象レベルでとらえるが、自分は特別視して具体レベルでとらえる。」
これが他人にレッテルを貼る、が起こる原因である。
これが他人にレッテルを貼る、が起こる原因である。
【「自分のこと」と「他人のこと」の違い】
自分のことは… | 他人のことは… |
特別だと思う | 一般化する |
他人との違いを見る | 他人との共通点を見る |
制約条件がすべて見える | 制約条件が見えない |
「そうは言っても…」と言い訳をする | 「あるべき姿」の正論をぶつける |
例:ダイエット
他人には「食べる量を減らして運動すればいいんだよ」といった抽象的な正論を言うが、自分の場合では「時間がないから」「痩せない体質だから」「今日は食べていい日」などの言い訳を必要以上にする
このような自己矛盾を解決するには、他人はなるべく具体的で詳細な事情まで考慮するようにし、自分はあまり特別視せずに引いた目で一般化してみるようにする。
依頼者と被依頼者(上司と部下)間の具体と抽象
仕事を頼んだり頼まれたりする状況でも具体と抽象のレベルを意識するべきである。
例として、上司と指示が具体的か抽象的かという観点、部下の期待している依頼は具体的か抽象的かを考えると大まかには4つのパターンに分けられる。(図54)
- 上司の指示は具体的で部下の期待も具体的
→面倒見の良い上司 - 上司の指示は抽象的だが、部下の期待は具体的
→丸投げされたと感じる - 上司の指示は具体的だが、部下の期待は抽象的
→もっと自由にさせて欲しいと感じる(マイクロマネジメント) - 上司の指示が抽象的で、部下の期待も抽象的
→任せるのがうまい上司

パターン1とパターン4では実際の指示と期待する指示の抽象度が一致しているためコミュニケーションギャップは発生しないが、パターン2とパターン3ではギャップがあるため、部下が不満を感じる原因となる。
また、新入社員のようなまだ業務に慣れていない人へは具体的に指示を出すパターン1、業務に慣れてくるにつれて部下の自由度が高いパターン4へシフトしていくとよい。
この本で紹介されている「具体⇔抽象」の考え方を身につけると、物事の本質を見抜く力が高まります。さらに、会議・資料作成・部下指導など、あらゆるビジネスシーンでも活かせます。
難しそうに思える論理的思考も、身近な例から自然に学べるので、初心者でも安心です。
難しそうに思える論理的思考も、身近な例から自然に学べるので、初心者でも安心です。
仕事や日常のコミュニケーションをもっとスムーズにしたい方、アイデアを広げたい方におすすめの一冊です。
「考える力」を鍛える第一歩として、ぜひ手に取ってみてください。
この記事を書いた人

藤縄 創大
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランドへ入社後、営業を経験したのちメールマーケティングやセミナー運営に携わる。現在は幅広い分野のライティングを担当。