『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』 企業ホームページ運営参考書籍レビュー
更新日:2024.07.24
新たな手法で顧客獲得につなげるコンテンツマーケティングに関する本・書籍をご紹介。 今回は『いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本』(著:宗像淳(むなかたすなお)、亀山將(かめやままさし))の読みどころやポイントを紹介します。
株式会社イノーバ代表取締役社長の宗像淳さんと同社マーケティング部の亀山將さんが、コンテンツマーケティングの基本をわかりやすく解説しています。コンテンツマーケティングが生まれた背景や具体的な始め方、効果的な活用事例などをまとめた1冊です。
企業の営業・マーケティング担当者の方や、企業ホームページからの新規顧客の開拓を検討している方はぜひご覧ください。
【特に重要なポイント・内容】
- コンテンツマーケティングとは、価値あるコンテンツの制作・発信をとおして見込み顧客のニーズを育成、購買を経て、最終的にはファンとして定着を目指す一連のマーケティング手法である。
登場した背景として、従来の売り込み型の広告だけでは、消費者に訴求しづらくなっているため。
また近年のネットの普及により、消費者が自ら情報収集を行い、主体的に購買の意思決定を行うようになったことも要因である。
コンテンツマーケティングのポイントは、以下の3つ。
1 価値あるコンテンツの作成
2 顧客を育てる
3 ファン化する
- コンテンツマーケティングに注目している人は、2つのグループに分けられる。
・ネットマーケティングに積極的な人々。即効性が高いSEO(検索エンジン最適化)などをやり尽くし、次の一手を模索している。
参考ページ:SEO対策とは? 10年・20年と長期的に企業ホームページで集客できる基本を、初心者にもわかりやすく解説!
・テレビなどのマス広告を手がけてきた人たち。消費者の購買行動の変化により「広告が効きにくい」と感じている。 - コンテンツマーケティングは恋愛に例えられる。接触の機会を増やして、段階的に関係を深め好きになってもらう。
これこそがコンテンツマーケティングの極意となる。
現在ではコンテンツマーケティングは世界的なトレンドとなり、米国では企業の9割が実施しているという調査結果がある。
- 日本における新商品情報の入手経路トップ3は以下となる。
1位 インターネット検索
2位 店頭で見て
3位 テレビ広告
- 米国のコンテンツマーケティングの権威であるジョー・ピュリッジの「顧客はあなたのことも、あなたの製品やサービスのことも気にかけていない。彼らが気にするのは自分自身のこと、彼ら自身の欲求やニーズだけだ」という言葉が有名である。
モノの見方や世界観が、コンテンツマーケティングと従来型マーケティングでは根本的に異なるという主張。
- 新たな買い手の購買メンタルモデルとなる「ZMOT(ジーモット)」が登場した。Zero Moment of Truthの略で「ゼロ個目の真実の瞬間」という意味。
従来のFMOT(First Moment of Truth)は「消費者が店頭で商品を買うかどうか判断する」というモデルであった。
一方、ZMOTは「来店前にインターネットで情報収集してすでに買うものを決めている」と、変化した購買メンタルモデルを指す。
ZMOTの登場によって、売り手と買い手の情報格差が逆転し、今や主導権は消費者が握る。
参考ページ:顧客がどの商品を買うかは来店前にすでに決まっている!? Googleが提唱するZMOT理論とは何か?
- 購買者は、住宅や自動車などの高額で関与度合いが大きな商品ほど、情報収集活動が活発である。
従来の広告だけでは「興味を喚起する」程度の役割しか果たせなくなっている。
- コンテンツマーケティングを行うメリットは、以下の5点である。
・広告宣伝費を抑えられる。
・専門家として信頼される存在になる。
・顧客のロイヤルティ(愛情や忠誠心)が高められる。
・情報を自然な形で拡散できる。
・グローバルな地域を対象にできる。
- コンテンツマーケティングはビジネスブログという形で、自社の資産として蓄積される。
広報PR活動にも効果的で、メディアへの露出の頻度も高められる。 - 営業マンゼロでも売り上げが増えていくEコマースのソフトウェア提供会社「デジタルスタジオ」の例
1 まずはECをテーマしたビジネスブログからスタートし、リードジェネレーション(顧客のメールアドレスや電話番号の獲得)の仕組み作りに取り組んだ。
ブログページ下に「小企業が世界に顧客を持つ夢を叶える」というタイトルで、ECに興味がある方へ向けた小冊子のダウンロードバナーを設置。
2 購買登録を行った人には、継続的にメールマガジンで情報を発信。
メルマガの内容は、ECの可能性や実務について深い理解が得られる内容で、専門家として信頼を得る目的である。またオンラインセミナーを定期開催して、顧客の疑問や不安の解消にも努めた。
3 見込み顧客と連絡をとる役割である「インサイドセールス」部署にて、「売り込み」ではなく、購買活動プロセスに寄り添い、社内の予算取りや承認を得るためのサポートを行った。
4 ユーザーである顧客サポートに、人的に手厚いサポート体制を敷いて顧客の満足度を高め、継続的な契約の獲得。
このような取り組みの結果、リード獲得から見込み顧客の育成、つまり「顧客を教育する」というプロセスができあがり、売り上げにつながった。 - コンテンツマーケティングの戦略設計6ステップ
1 目的の設定
2 環境分析(目的実現に対して、何が出来て何が出来ていないのか)
3 ペルソナ設計(情報を届けたいターゲット像の明確化)
4 コンテンツ設計(いつどのようなコンテンツを提供することで顧客の態度変容を促すか)
5 運用体制
6 効果測定(コンバージョン率や費用対効果)
ペルソナ設定では「顧客インサイト(隠れた本音)」を明確にすることが重要である。
- 顧客のニーズには「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」の2種類に分かれる。
・潜在ニーズ:知りたい
・顕在ニーズ:行動したい
潜在ニーズの段階では課題に気づいていない、もしくは気づいていても問題視していない状態。一方で、顕在ニーズとは、問題を解決するためのアクションを起こしたい状態を指す。
- すぐれたビジネスブログに必要な3つの条件
回遊性:コーポレートサイトとビジネスブログ間の移動を簡単にできること。
ソーシャルメディア対応:ソーシャルメディアの共有ボタンがわかりやすい場所に設置すること。
CTA(コールトゥアクション:行動喚起):資料ダウンロードページや商品ページへの誘導バナーなど、記事読了後に読者にとってほしい行動への誘導経路のこと。
ポイントは売り込みすぎない、読み手の邪魔をしないことである。
ブログの構築はCMS(Content Management System)を使うと利便性に優れる。サイト制作の知識がなくとも、ドラッグ&ドロップなどの簡単操作でコンテンツ管理ができる。
- コンテンツマーケティングでは「流行りすたりがなく、常にみんなが知りたい情報」を意識すること。
たとえば「ビジネスメールの書き方」や「名刺交換の方法」などのストック型コンテンツ。
即効性の面では、現在流行しているキーワードを記事にする万人から興味をひきやすい、トレンド型コンテンツも有効である。
- 効果的なコンテンツのタイプとして、この2つがある。
・課題解決型コンテンツとは、顧客の課題や不安に寄り添うコンテンツを用意すること。たとえば「〇〇〇 偽物 見分け方」など。
・興味深堀り型コンテンツとは、ターゲット読者が興味を持ちそうなトピックを深掘りしたプロフェッショナルな記事のこと。信頼を得たり、ファンの獲得につながる。
- コンテンツ制作のポイント
- コンテンツ制作の敵は「完璧主義」である。
はじめから上手な文章を意識するがあまり、筆が進まなくなる。まずは書いてみること。
初稿はどんなにひどくてもいい。テーマに関することを書きまくる。削ることはあとでできる。 - 「書く」と「直す」を分ける。
文章を書く作業と文章を直す(推敲)を同時進行しない。
- web媒体の文章は飽きられやすい。読者はたまたま辿りついただけで、他ページへのリンクや広告などで気が散りやすい。
- ターゲット読者の好奇心を最大まで高めるようなタイトルを考える。ネタバレさせずに、中身を読みたくなるようなタイトルを意識する。
「これは自分のためのコンテンツだ」と思わせる工夫を施し、離脱を避ける。
- SEOとはSearch Engine Optimizationの略で、検索する人が求める「回答」を検索エンジンから見つけられやすい状態にすること。
具体的なSEO施策
・タイトル(<title>タグ)をきちんとつける。
・ページの概要(meta description)を記述する。
・見出し(<h1><h2>タグ)にキーワードを入れる。
・画像の詳細情報(<alt>タグ)にキーワードを入れる。
・本文内にキーワードを詰め込みすぎない。
・読み手が使いそうな言葉、文章の意識。
- コンテンツ制作の敵は「完璧主義」である。
- 「コンテンツマーケティングはマラソンである」
効果測定の際には無理な目標を立てたり、近視眼的に一喜一憂することなく、数字の裏側にある「読者」「見込み顧客」を理解することを心がける。 - コンテンツマーケティングの最終的なゴールとは「圧倒的なブランドの構築」である。ブランディング意識なくしてコンテンツマーケティングは成功しない。
ブランドを構築する3本柱
・Likavility(好ましさ)
・Expertise(専門性)
・Distinctiveness(他社との明確な違い)
- 顧客から「会えてよかった」と言ってもらえる情報発信を行う。
有名なコンテンツマーケティングの成功例
個人住宅向けプールを販売する、アメリカのRiver Pools & Spasという工務店。
同社はリーマンショックをきっかけに、マーケティング予算を10分の1に縮小することになり、コンテンツマーケティングに取り組みはじめた。
記事のテーマは「プールの買い方や選び方」「プールの値段」「プールのメンテナンス方法」などである。
その結果リーマンショックの最中でありながら、ファンを獲得し大きく売り上げを伸ばすことに成功した。理由は「サイト経由の問い合わせの増加」「営業の成約率が劇的に上がった」ことの2つ。
ファンとなった顧客は商談もスムーズに進むうえ、成約率も高い。
こうした顧客ロイヤルティが高まっている状態では、競合他社と比較されることがないことも強みとなる。 - ポジショニングを明確にする。ポジショニングの源泉は競合との「差別化」
ニッチな分野に細分化してでも、1位を狙うことが重要である。
大企業よりもむしろ、経営者や事業担当者がその思いをダイレクトに発信できる中小企業のほうが、コンテンツマーケティングでは有利となる。 - 売り上げを5倍に伸ばしたカルビーのポジショニング転換
「フルグラ(フルーツグラノーラ)」というシリアル商品。当初は和朝食やパンなどと並び、朝食のひとつとして定義した商品だったが、あまりに広すぎる市場で販売は苦戦。そこでポジショニング転換を図った。
ご飯やパンと競うのではなく、ヨーグルトなどに合わせる「引き立て役」と再定義しなおすことで、ターゲットが明確になりブレイクを果たす。自らを主役ではなくあえて脇役とする意志決定は、競合だけを見ていては生まれない発想だった。
現在では「フルグラといえばカルビー」というブランドの確立にもつながった。
- コンテンツマーケティングを活用することにより、日本にいながら世界中を相手にビジネスを行うことが可能となった。新たな顧客の獲得においては、今後ますますコンテンツマーケティングは重要な手法といえる。
現在では、消費者が情報を入手する方法が多様化しています。そんな時代に、企業は消費者が自社に関心を持ってもらうためには、有益で魅力的なコンテンツの提供を継続することが大切です。
また今後も、コンテンツマーケティングは重要な役割を担うことが予想されます。
企業は常に最新のトレンドや、消費者のニーズを意識したコンテンツの作成が必要とされるでしょう。
この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。