『〈新版〉日本語の作文技術』 企業ホームページ運営参考書籍レビュー
更新日:2024.07.24
企業ホームページ運営やライティングに関する本・書籍をご紹介。今回は『〈新版〉日本語の作文技術』(著:本多勝一)の読みどころやポイントを紹介します。
著者は元朝日新聞社の編集委員である本多勝一さん。文章を「違和感なく、いかにわかりやすく読者に伝えるか」にポイントをおいた解説となっています。
日本語の正しい使い方として、あらためて多くの発見や学びを得る書籍です。
【特に重要なポイント・内容】
- 言葉の芸術としての文学は、作文技術的センスの世界とは全く次元が違う。その意味での「事実的」あるいは「実用的」な文章とは、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと、これだけである。
これは才能というよりも技術の問題だ。技術は学習と伝達が可能なものである。飛行機を製造する方法は、おぼえさえすれば誰にでもできる。同様に「わかりやすい文章」も、技術である以上だれにも学習が可能なはずだ。
- わかりにくい文章の実例は,修飾する言葉とされる言葉とのつながりが明白でない場合である。原因の第一は,両者が離れすぎていること。
×「プロパンガスが爆発して4人が重傷、32人が飛び散ったガラスの破片などで1~2週間のけがをした。」
〇「プロパンガスが爆発して、飛び散ったガラスの破片などで4人が重傷、32人が1~2週間のけがをした。」
×の文では、「32人が飛び散った」とまるで人間が飛び散ったかのように一瞬思わせられる。これを抵抗なく読ませる方法は、修飾関係の直結だ。
- 修飾語の語順には以下の4つの原則がある。
- 節を先にし、句をあとにする。
×「厚手の白い横線の引かれた紙。」(“白い横線”と誤読の可能性)
〇「横線の引かれた厚手の白い紙。」 - 長い修飾語は前に、短い修飾語は後にする。
×「明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した。」(同義だが理解しづらい)
〇「この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した。」 - 大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ。
×「豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた。」(小状況から大状況へとなっている)
〇「初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた。」 - 親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
×「初夏のみどりがもえる夕日に照り映えた。」(“みどりがもえる”と誤読の可能性)
〇「もえる夕日に初夏のみどりが照り映えた。」
- 句読点は、論理的に正確な文章という意味のわかりやすさと深い関係をもつ。
×「渡辺刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた。」
〇「渡辺刑事は、血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた。」
×の文では血まみれになっているのは渡辺刑事なのか賊なのかわからない。句の適切なところに読点をうつことで誤解はなくなる。- カギカッコ(「」)内に引用を用いるときは、原文のまま忠実に示さなければならない。
- 文が終わったら必ずマル(。)をつける。
- 長い修飾語が2つ以上あるとき、その境界にテン(、)をうつ。
- 原則的語順が逆順の場合にテンをうつ。
- 重要でないテンはうつべきではない。わかち書きを目的とするテンは一切うたない。
- 漢字を用いることで「わかち書き」に当たる役割を果たしている。ローマ字やカナと比べて視覚的なわかりやすさは抜群だ。ある意味では世界に誇る大発明である。しかし文の構成により、漢字とかなの使い分けが必要だ。
×「その結果今腸内発酵が盛んになった。」(漢字単語の連続はわかりづらい)
〇「その結果いま腸内発酵が盛んになった。」
- 助詞と助動詞といった品詞は日本語の性格を決定する。助動詞の方は陳述を助けるといった補助的役割を果たす。助詞の方は文章全体の構造を支配する重大な役割を演じる。
- 「象は鼻が長い。」(文の題目を表す助動詞「ハ」)
- 「蛙は腹にはヘソがない。」(対照の係助詞「ハ」)
- 「彼は飯をいつも速く食べない。」(ハなし)
“例外なく常に遅い”という無対照を示す。 - 「彼は飯をいつもハ速く食べない。」
“ふつうは遅いが、例外がある”ことを示す。 - 「彼は飯をいつも速くハ食べない。」
“ふつうは速いが、常に速いというわけではない”ことを示す。 - 「彼は飯をいつも速くハ食べない。」
“ふつうか遅いか”となり“少なくとも速くはない”ことを示す。
1つの文(または句)の中では3つ以上のハをなるべく使わない(2つまでとする)のが、より良いといえる。
×「私は3年前までは週末には本は読まなかった。」(ハが多いと論理上の不明度が増大する)
- 「来週までに掃除せよ。」(マデとマデニを適切に使う)
×「来週まで掃除せよ。」(来週まで掃除し続けるとの意味になってしまう)
〇「来週までに掃除せよ。」(来週までに一度、掃除を終える意味になる) - 「少し脱線するが・・・」(接続助詞の「ガ」)
「にもかかわらず」や「しかし」などに言い換えられるような明確な逆接条件のときに用いること。「そして」という程度のただ2つの句をつなぐだけの使い方は、読者の思考の流れを一瞬乱すことになる。
- 段落(改行)は大きくまとまった思想表現の単位である。段落のいいかげんな文章は、書こうとしている思想もまたいいかげんで、不正確で、非論理的とみなされる。
表現の繰り返しは、特別な場合を除き極力避ける。たとえば「しかし」ばかり使わずに「けれども」「ところが」「だが」「が」「にもかかわらず」などを混用すること。
- 鈍感でない文章とは、その終極点はおそらくリズム(内旋律)の問題になるだろう。“高度”な文章論に属する問題かもしれないし、小説家などのプロをめざす人々の課題ともいえる。
「(中略)とはいうものの、より多くの人に読まれることを目的とするのであれば、リズムの問題もやはり大いに関連してくるので、ごくかんたんながら触れていきたい。」
この文で「ごくかんたんながら」を削って朗読してみると、明らかに調子が狂う。この場合、事実として「ごくかんたん」に触れているが、もしかんたんでないのであれば削って「触れておきたい」とするだけで、論理としては問題がない。しかしリズムの上では問題があるため、別の修飾句を付け加える必要がある。
日々何気なく触れ、意識することのない存在である日本語。
ライター初学者はもちろん、ベテランライターにも文章術の原点に立ち返る意味で参考となるでしょう。
またビジネスシーンにおいては、相手に誤解を生じさせない文章作成にも活かせます。
「文章を志す人のバイブル」とも呼ばれる本書で、真意が伝わる文章を学びたい方にオススメの書籍です。
この記事を書いた人
高島 耕
株式会社ディーエスブランド Webマーケター
ディーエスブランド入社後、メールマーケティングやセミナー運営、社内業務のDX化に携わる。現在はメタバースや生成AIなどの、先端技術分野のライティングを担当。