「売れない商品」の山で売上げをアップさせる!? Amazonも活用しているロングテール戦略とは何か?
・「ホームページ(HP)を活用して売上げをアップしたい」
・「この商品は店頭での人気はイマイチだけど、求めている人はどこかにいるんじゃないか?」
どの会社もWebを活用して売上げを伸ばしたいと考えていますが、その全てが成功しているわけではありません。その一因として、リアル(実店舗)とWebの販売戦略の違いがあまり理解されていないことが挙げられます。
Webマーケティングの基礎であるロングテール戦略
ここで紹介するロングテール戦略(ロングテール理論)は、Webマーケティングの基礎であるのと同時に、リアルとWebの販売戦略の違いを如実に示す理論でもあります。これを押さえるだけで一気にWebマーケティングの特長が把握できます。
また、比較的に実行しやすいのもロングテール戦略の優れたところです。
何しろロングテール戦略を実施するには、圧倒的な人気商品・人気サービスは必要ありません。埋もれている商品・サービスで売上げを積み重ねるのが、ロングテール戦略の真骨頂です。それを実現しているのがネットショップ最大手のAmazonです。
そのうえ、Web分野の高度な専門知識も不要です。ただ真面目にページを作りこんで増やしていくだけで実現できます(もちろん、最低限のSEOの知識はあったほうが効率的ですが)。
それでは、Amazonも活用している、「売れない商品・サービス」で売上げをアップさせるロングテール戦略とは何なのか、具体的に見ていきましょう。
1.ロングテール戦略とは?
ロングテール戦略とは、「少数の人気商品に頼るのではなく、その他大勢のニッチな売れない商品の販売量を積み重ねることで、全体の売上げを確保する」という理論です。
Amazonなどのネットショップ特有のビジネスモデルとして、米『WIRED』誌の編集長・クリス・アンダーソンによって提唱されました。
※以下はクリス・アンダーソンがロングテール戦略について、自ら解説している書籍になります。
2.インターネットの登場以前の販売戦略では、一部の人気商品に注力するのが常識だった
「少数の人気商品ではなく、その他大勢の商品の販売量を積み重ねて全体の売上げをアップする」
このロングテール戦略の考え方は、インターネット普及以前の小売業界の常識とは、まるで正反対の販売戦略です。
インターネットが台頭する前、つまりリアル店舗(実店舗)を構えて商品を販売するしかなかった時代は、少数の人気商品・売れ筋商品に特化して大量に販売し、売上げの大部分を確保する販売戦略が常識でした。
上位20%にすぎない人気商品で全体の売上げの80%を稼ぎ出すことから、「20対80の法則」と呼ばれます(法則を発見した経済学者の名前を取って「パレートの法則」とも呼ばれます)。
リアル店舗では制約が多いので、人気商品への特化せざるをえない
リアル店舗でこの20対80の法則が有効だったのは、以下のような制約が背景にあります。
- 店頭に商品を陳列できるスペースには限りがあるので、多くの販売数を稼げる人気商品に特化した方が有利
- 人気商品以外のその他大勢の商品を一つずつに広告費・宣伝費をつぎ込むと、コストが莫大になってしまう
- リアル店舗の販売員に、その他大勢の商品全てのセールストークを習得させるのは事実上不可能
- リアル店舗では商圏が限られており、潜在的な顧客数が限られる。よって、商圏内で一番大きいニーズがある人気商品に絞らないと、顧客数を確保できない
3.インターネットが制約を破壊し、人気商品に頼る必要性がなくなった
しかし、インターネットの登場がこれらの制約を破壊しました。
- インターネット上には商品の陳列スペースに制限が無い
→人気商品だけでなく何万点もの商品を同時に販売できる - どれだけマイナー・ニッチな商品でも、その商品の紹介ページさえ作ればYahoo!やGoogleなどの検索エンジンを介して、顧客が見つけてくれる可能性がある
→広告費・宣伝費が安価で済む - ホームページ上で紹介すれば24時間・365日正確な商品説明を顧客に見てもらえる
→リアル店舗のように、労力と人件費をつぎ込んで販売員に莫大な数の商品のレクチャーを行わなくてもよい - インターネットは日本全国・全世界の人間を相手に発信できるので、潜在的な顧客数が莫大な数になる。
→そのため、マイナー・ニッチな商品でも十分な顧客数を獲得できる
これにより、従来のリアル店舗前提の販売戦略を完全に覆した商品の売り方が可能になりました。
それまでは上位20%の人気商品で全体の売上げの80%を稼ぐのが常識だったのに、「80%のその他大勢の『売れない商品』で、全体の売上げの大部分を確保する」戦略が他を圧倒しはじめたのです。
4.大量の「売れない商品」で巨額の売上げを獲得しているAmazon
この戦略を最良の方法で実現している会社が、ネットショップ最大手のAmazonです。Amazonが他のネットショップを圧倒しているのはその豊富な品揃えです。取扱商品数は日本だけで1億点を超えるとされています。
それだけの商品数ですから、全てが販売数の多い人気商品というわけにはとてもいかず、1年に数回売れるかどうか、という需要の少ないニッチな商品・売れない商品も大部分を占めています。
しかし、Amazonに巨額の利益をもたらしているのは、その「売れない商品」たちなのです。たとえ、ひとつの商品でみれば1年に数回の販売量しかなくても、膨大な商品点数があるので、それらを積み重ねていけば巨額の売上げを叩きだせます。
5.細い売上げの列が長々と続いていく→ロングテール
このようなAmazonの商品販売の様子を図式化したものが、下のグラフになります。
グラフの右側は販売数の少ない、ニッチな商品がなだらかに並んでいます。ここでは省略していますが、実際はニッチ商品たちの列が延々と続いていきますので、この部分を合算すると莫大な売上げになります。
このグラフのかたちが恐竜のしっぽ(テール)のように見えて、テールの部分が長大に伸びていくさまからロングテール戦略という名が付けられました。
6.ロングテール戦略は売上げを安定化させる
さらに、ロングテール戦略では売上げが安定するメリットもあります。
一部の人気商品に売上げのほとんどを頼る戦略だと、ブームの終了や競合商品の登場でその人気商品の売上げが落ちてしまえば、壊滅的な被害を受けます。
一方、ロングテールでの販売戦略では、売上げを多数の商品で分散して稼いでいるので、ひとつの商品の売上げが凋落しても、全体へのダメージは限定的になります。
よって、従来の「20対80の法則」をもとにした人気商品偏重の販売戦略よりも、長期的に見て安定的に売上げを積み重ねられるのです。
ロングテールは、今まで軽視されていたニッチな「売れない商品」たちで売上げを確保するための戦略といえます。
7.ロングテール戦略の弱点・デメリットとは?
ここまで、ロングテール戦略にはさまざまなメリットがあることを確認してきました。ですが、ロングテール戦略は決して万能のWebマーケティング手段ではありません。
大きな弱点・デメリットも併せもっているのです。ロングテール戦略にはどんな弱点・デメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
1.ホームページ作りを手抜きできない
ロングテール戦略で成功を収めるには、「どうせ、こんな商品・サービスは人気がないから、ホームページでの説明は一行で十分だ」と手を抜くことは許されません。商品・サービスごとにページを作り、紹介文もしっかりと書くことが必要です。
商品・サービスごとに個別ページを設けないと、ニーズを持っている顧客が検索エンジンを通して見つけてくれないからです。
結果を出すのに手間・労力がかかるのが、ロングテール戦略の弱点の一つです。
2.即効性がなく、短期的な売上げが小さい
ロングテール戦略は検索エンジンに集客を大きく依存した手法です。
そのため、SEO自体の弱点である即効性の弱さからは逃れられません。
※SEO(検索エンジン最適化)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンからアクセスを集める手法のことです。
詳しくは以下のページをご覧ください。
検索順位が安定するまでに半年程度を要するうえに、ロングテール戦略の肝であるページ数の増加・充実は手抜きができないので時間がかかります。
加えて、ロングテール戦略の主役である「売れない商品・サービス」たちはニッチなニーズしかないので個々に爆発的な売上げを稼ぐことはできません。よって、ロングテール戦略では短期的な売上げへのインパクトはかなり小さくなります。
8.ホームページで売上げをアップさせたいなら、ロングテール戦略を絶対に活用すべき!
前項で触れたように、ロングテール戦略は万能のWebマーケティング手法ではなく、大きな弱点・デメリットも存在します。
ですが、ロングテール戦略には、売れないニッチな商品の有効活用・売上げの安定化など大きなメリットがあります。ホームページで売上げをアップし、企業を成長させたいならロングテール戦略を絶対に活用すべきです。
ロングテール戦略は、長期的に見てコストパフォーマンスに優れている
もちろん、商品・サービスのページを作りこんで充実化させてロングテール戦略の基盤を整えるには、かなりの手間と時間がかかるでしょう。ですが、一度作ったページは長期的に効果を発揮し、その商品・サービスを求めている人を集客し続けるのです。
特に、ページの追加が自社でできるホームページサービスであれば、金銭的な追加コストを支払うことなく集客力を強化できます。これはかなり大きなメリットです。必要なのはホームページ担当者のやる気だけです。
最初は大変ですが、それにめげずにコツコツとページを追加していけば長期的なリターンもその分だけ積み重なっていきます。会社の持続的な成長を実現するためにも、ロングテール戦略を活用したホームページ運営をお勧めします。