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『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる』 企業ホームページ運営参考書籍レビュー

更新日:2025.02.26
新たな宣伝手法で顧客獲得を目指すコンテンツマーケティングに関する本・書籍をご紹介。
今回は『商品を売るな コンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる』(著:宗像淳)の読みどころやポイントを紹介します。


タイトルの「商品を売るな」と聞くと「なぜ?」と思う方も多いでしょう。ですがテレビを見ているときに流れるCM・インターネットを見ているときに表示されるバナー広告が不快に感じる方も多いのではないでしょうか。雑誌や新聞の広告にいたっては、そもそも見ないという方も増えています。

これは顧客に対して従来の売り込み型のマーケティングの効果が薄くなっていることを示しています。そこで新しく注目されている手法がコンテンツマーケティングです。

本書では株式会社イノーバ代表取締役社長の宗像淳さんがコンテンツマーケティングとは何か、なぜ必要なのかを分かりやすく解説しています。

実際の事例やこれから始めるための手順も解説されていますので、コンテンツマーケティングについて学びたい方、企業の営業・マーケティング担当者の方の参考になる一冊でしょう。

【特に重要なポイント・内容】

Chapter.1


これまでのマーケティングは商品をどう売るかに注力していました。しかしコンテンツマーケティングでは“商品を売らない”。その理由とコンテンツマーケティングの基本について解説しています。


 コンテンツマーケティングとは…

 「顧客の獲得を目的にコンテンツを制作し、提供することに注力したマーケティング手法である。


  • 消費者の行動はインターネットの普及によって大きく変化した。これまでは受動的に情報を得ていたが、より良い判断ができるように能動的に情報を収集するようになった。

    受動的に受ける情報
    メディア広告、訪問販売、営業電話など
    能動的に受ける情報
    ビジネスブログ、ソーシャルメディア、セミナーなど

  • インターネットの普及によって購買プロセスが変化し、商品に関心を持った後に「検索する」というプロセスが当たり前になった。

  • FacebookやX(旧Twitter)などのソーシャルメディアの普及によって誰でも口コミを発信できるようになり、多くの人の購買行動に影響を及ぼすようになった。

    参考ページ:SNSとは?意味や種類・メリットを初心者向けにわかりやすく解説
    参考ページ:Facebookとは? メリット・デメリットを初心者向けに解説!
    参考ページ:Twitter(X)とは?メリット・デメリットをSNS初心者向けにわかりやすく解説! 

  • 消費者が検索することが当たり前となったため、企業側としてはこの行動を前提としたコンテンツを用意しておく必要がある。

    例えば…粘土のハンドクラフトに挑戦したい人がいるとして、はじめに粘土の種類や特性、ハンドクラフトの作り方などを調べる。そういった人に向けた情報を掲載したWebサイトを事前に作成すれば、企業として認知されやすくなる。

  • コンテンツマーケティングはBtoB(企業間取引)でも重要なマーケティング施策である。新しいパートナー企業を探すときや設備を導入するとき担当者は様々な情報を収集して比較検討するため、企業の公開するコンテンツが専門知識豊富で課題解決の糸口を提供するものであればその会社への信頼度は各段にアップする。

    コンテンツマーケティングについて、上司に提案しても受け入れてもらえないのではないか。
    そういった不安への解消法も提示されています。

    Q.1 「効果が分からないのでは?」
    A. コンテンツマーケティングの効果は定量的に評価できる。コンテンツを見た「訪問者数」や資料をダウンロードした「ダウンロード数」などでどれだけの人がコンテンツを見て関心を持っているか分かる。資料のダウンロード時にユーザー情報を入力してもらえば、見込み客が実際に商品を購入したかも評価できる。


    Q.2 「予算がないから始められないよ」
    A. 自社のWebサイトを用意すれば、用意したコンテンツを長期にわたって公開できるためコスト削減が見込める。コンテンツは蓄積できるため、継続するほどコンテンツは増えて人々が自社のコンテンツにたどり着く可能性が高まる。

    実際に米カポスト(Kapost)のレポートでは公開後5カ月でリード情報獲得の単価が一気に下がるとしている。
    ※リード情報…見込み客に関する情報。具体的には、名前、連絡先、会社名、メールアドレスなどである。


    Q.3 「社内でやれる人がいないからなぁ」
    A. 日常業務でコンテンツ制作に携わってきた社員は意外にいるものである。説明資料作成を行っている営業や販売促進担当、商品パッケージのデザイナー、社内報の担当者など、どれもコンテンツマーケティングに適した人材である。コンテンツ制作経験のある人からできそうな人、やる気のある人を探せばよい。


    Q.4 「コンテンツマーケティングなんて前例がない、アメリカの話でしょ?」
    A. 国内でもコンテンツマーケティングの成功事例は既にある。例えば花王は「マジカルスタイル」というWebサイトで家事のお役立ち情報を公開しており、「型くずれ 洗濯」「アイロン かけ方」といった商品名ではない検索ワードからの閲覧者獲得に成功している。

Chapter.2


実際にコンテンツマーケティングに取り組んでいる先進事例を紹介しています。本書では国内から6事例、海外から7事例をベンチャー企業、大企業、BtoB、BtoCと幅広く取り上げていますが、本記事では国内企業の事例を2つほど紹介します。


事例1:オーマイグラス
オーマイグラス オンラインストア|メガネ(眼鏡・めがね)・サングラス

オーマイグラスは2011年に創業した、眼鏡のインターネット通販という新しい市場を切り拓いたベンチャー企業である。当時ネット通販で眼鏡を探す人がいないなかで同社がおこなったのは、眼鏡やサングラスの話題を提供する「OMG PRESS」というブログの運営である。

ECサイトと情報サイトを並行して運用する取り組みは「メディアコマース」と呼ばれ、多数のベンチャー企業が取り組んでいる。

オーマイグラスの場合、情報サイトのOMG PRESSで月間17万人、ECサイトでは月間32万人のユーザーアクセスを獲得している。さらにECサイトでの購入者の2割はブログの読者となっており、ECサイトへの顧客誘導の成功例と言える。


事例2:ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ
ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社

ソニーの100%子会社でソフトウェア開発を手掛けるソニーデジタルネットワークアプリケーションズは、2013年にAndroidアプリの脆弱性検査ツール「Secure Coding Checker」の開発・販売、ウェブアプリの脆弱性診断サービスを始めた。しかし当時はスマートフォンのセキュリティについて認知度が低く、ユーザーのニーズが顕在化していなかった。

そこで同社は導入の第一段階としてセキュリティに関するブログを立ち上げ、このときあえて「セキュリティの意識が高くないアプリ発注者や開発者」を読み手と想定したコンテンツを作成した。なぜなら同社の想定する顧客はセキュリティ分野にあまり関心のない人だからである。

これらの効果はブログ開設から1年未満で出ており、商品に関する1か月の平均問い合わせ件数は増えている。さらに自社開催以外のセミナーレポートを発信するなど、ブログ読者のニーズに合わせて自社の枠を超えた発信の工夫も進めている。


各社について、コンテンツマーケティングの成功事例では以下の共通点も挙げられます。

・自社のノウハウを積極的に公開し、各分野の専門家としてアピールする
・自社の情報だけでなく、他社の情報も中立的に紹介する
・ブログだけでなくEブックや動画、セミナーなど複数のメディアと組み合わせるとより高い効果が見込める

コンテンツマーケティングの先進事例では売り上げ増加だけでなく、以下のようなメリットもあります。

・従来のメディア広告に比べ、費用が抑えられる
・新規顧客獲得、リピーター獲得の割合が既存の営業スタイルより多い

Chapter.3


コンテンツマーケティングをどのように始めるか、具体的な運用や目標設定の方法を紹介しています。コンテンツ作成に使えるメディアの種類と特性、実践法も学べます。

  • コンテンツマーケティングの運用で大事なのは「継続」と「リアルタイム性」である。

  • コンテンツマーケティングの実践プロセスは、以下の5つの要素から成る。
    1. コンテンツ戦略/企画
    2. コンテンツ制作
    3. 発信、運用
    4. リアクション(数字、意見)
    5. 分析

  • 一部業務の外注を検討することも必要である。例えば文章作成やデザインは最も外注しやすく、コンテンツの質の向上に直結しやすい。

  • コンテンツマーケティングの効果測定について、「投資に対して、どれくらいの利益があったか」を示すROI(Return On Investment:投資利益率)を用いると効果的。

    コンテンツマーケティングにおけるROIの設定例として以下のものが挙げられる。

    ・資料ダウンロード・問い合わせ・メール登録などの「コンバージョン獲得数(率)」
    ・コンテンツがどれくらい届き、読まれたかの「閲覧ページ数」「訪問ユーザー数」

    参考ページ:コンバージョン(CV)とは?Webマーケティングでの意味をわかりやすく解説

  • コンテンツマーケティングを成功させる5つのステップは、以下の通りである。
    1. ゴールの設定
    2. ペルソナ設計(ターゲット設計)
    3. コンテンツ設計
    4. エディトリアルカレンダーの作成と運用
    5. KPIの測定

  • 各種メディアの特性を理解したうえでコンテンツマーケティングを実践することが重要である。
    以下にメディアの種類と特性について、抜粋して記載する。

    【ブログ】
    企業のマーケティング施策の一環で運営するブログは「企業ブログ」「ビジネスブログ」とも呼ばれ、ブログの記事は文章・画像・動画・外部サイトへのリンクなど様々なものが含まれる。

    定期的にコンテンツを公開し続けることで蓄積された記事に新規読者がたどり着く可能性が高まる。ブログは問い合わせなど売り上げにつながる要素も多いため、コンテンツマーケティングの肝とも言える。

    ブログの運営では読者の知りたい情報を惜しみなく発信すると、読者の信頼を得られる。
    なお、企業ブログのコンテンツ追加にはCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を利用するのが効果的。

    参考ページ:CMSとは?意味と種類・ホームページへの導入事例をわかりやすく解説 

    【ソーシャルメディア】
    ソーシャルメディアはFacebookやX(旧Twitter)に代表される、他者と交流するためのオンラインプラットフォームである。長期的にユーザーとつながり、より深い関係を構築できる。

    これらのソーシャルメディアのアカウントを運用する際は、Facebookページの「いいね!ボックス」をブログに設置するといったように、ブログや各メディアと組み合わせて活用すると情報発信力を高められる。

    【ホワイトペーパー/Eブック】
    ホワイトペーパーは自社の顧客の導入事例・商品の仕様・調査レポートなどを指す。Eブックは商品のスタートガイドや、活用のベストプラクティスなどをまとめたものである。

    これらはブログなどのコンテンツよりも詳しい情報、実践的な情報が盛り込まれていると効果的である。


本書を読むことでコンテンツマーケティングの重要性と先進事例、具体的な始め方まで学べます。

さらに本書ではコンテンツマーケティング診断チェックシートもあり、コンテンツマーケティングをこれから始める方、すでに取り組んでいる方どちらも活用できるでしょう。

費用をかけずに集客力を強化できるコンテンツマーケティングは、大企業だけでなく中小企業にとっても有効です。
 

コンテンツマーケティングに興味がある方、会社で実践している担当者におすすめの一冊です。

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